第九章
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「今日は帰りが遅いですけれどそれでいいですよね」
「畏まりました。では坊ちゃま」
「うむ」
「今宵はデートをお楽しみ下さい」
「わかった。それはそうとしてだ」
「何でしょうか」
ここで話題が変わる。神代は紅茶を飲み続けている。紅茶はロイヤルミルクティーだ。それを飲みながら爺やに対して声をかけたのだ。
「この紅茶は中々いけるな」
「ディスカビル家も使っている茶ですので」
「そうなのか。だが」
ここで神代はまた言う。
「爺やが入れた紅茶の方がいいな、やはり」
「有り難うございます」
「事務所に帰ったらまず爺やの茶を飲みたい」
こうも告げる。
「それでいいな」
「畏まりました。それでは」
「うん。しかし」
ここで神代はまた話題を変えた。今度は店の窓の向こうを見ていた。そこにはラフな格好で黒髪に紫のメッシュを入れた良太郎が十人程の人数を引き連れてダンスに興じていた。神代は彼を見ていたのだ。
「先程からあの場所でダンスを踊っているあの男」
「何か凄いダンスね」
岬も彼を見ている。見れば見事なブレイクダンスだ。
「まるでアメリカのダンサーみたい」
「そうだな。しかし」
ここで神代のいつもの癖が出た。
「あの程度では俺には適いはしない」
「剣君ブレイクダンスもできるの?」
「当然だ」
真剣な顔で岬に答える。
「俺はダンスにおいて頂点を極める男。ブレイクダンスであってもだ」
「そうだったの」
「だからだ。少し行って来る」
「行って来るって剣君」
しかし神代は既に立ち上がっていた。そのまま店を出て良太郎のところに向かっている。
「では行ってらっしゃいませ坊ちゃま」
「うむ、爺や」
いつもの二人のやり取りだった。
「タオルを用意しておいてくれ」
「はい」
「全く。いつもこうなんだから」
岬はそんな神代を見て困った顔になっている。しかしその間にも神代は良太郎のところに向かいそこでダンサー達に囲まれた彼と対峙していた。
「面白いことをしているな」
「あれ、君もダンスがしたいの?」
「そうだ」
こう良太郎に答える。良太郎はにこにこと笑いながら彼を見ている。
「かなりの腕のようだな」
「ダンスは大好きだよ」
その笑顔で神代に答える。
「動物もだけれどね」
「俺も動物は好きだがな」
「そうなの」
「特に馬がだ」
話が微妙にずれてきていた。
「だが今はダンスをしたい。勝負といくか」
「勝負なんかしないよ」
しかし良太郎はそれは断る。
「一緒にやりたいのならいいけれど。どう?」
「ではそれでいい」
神代もそれで話を受けるのだった。上着を脱ぐともう傍に来ていた爺やがその上着を受け取る。岬も一緒にそこにいる。実に用意がいい。
「はじめるぞ」
「う
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