第一部
三月の戦闘 T
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身の剣の腕を磨くこと以外に興味はなく、その為ならば誰にどんな迷惑をかけようとも一切気にしないという、とても迷惑な性格である。無闇矢鱈と殺生をするわけではないのでヴォバン公爵よりはマトモだろうが、正直ドングリの背比べ。周りの人間にしてみたら、どちらもあまり変わりはしないのだ。この二人は、どちらもそうとうな戦闘狂である。
「いや〜、まさか【剣の王】が新たに二人も生まれるとは思っていなくてね。それも、二人とも物凄い力量の持ち主だっていうじゃないか!これはやっぱり、誰が一番強いのか試してみたくなるだろう!?」
「ならないよ!」
実を言うと、世界中の裏に通ずる人間は、この展開を予想していた。サルバトーレ・ドニ卿といえば、世界中飛び回って、強い敵に片端から戦いを挑む男である。『この国のこういう名前の人物がとっても強いらしい』などと噂を聞くと、それが例え魔術を知らない一般人でも戦う為に突っ走るような人間である。
そんな男が、新たに生まれたカンピオーネ―――しかも、その内二人は剣や刀の達人だと聞いたのだ。戦いに来ない筈がない。むしろ三ヶ月も来なかったのは、【王の執事】とも呼ばれる彼の親友でありお目付け役であるアンドレア・リベアと各地の魔術結社が、必死になって時間稼ぎをしていたからである。
日本が【魔界】と呼ばれるのは、この小さな島国の中にカンピオーネが四人も生まれたからである。しかも、その彼らは全員に交友関係があり親しいらしい。そんな彼らの誰かに手を出して、それに激怒した他のカンピオーネとの戦争になる可能性だってあるのだ。最悪、一国か二国が滅んでも可笑しくない。必死になって彼の気を紛らわせるような強者の情報を探し、時間稼ぎをする彼ら。それはもう涙ぐましい光景であった。
・・・のだが。やはりというべきか何と言うべきか。新たなカンピオーネと剣の腕の競い合いをしてみたかった彼を止めることは出来なかった。隙をついて逃げ出され、邪魔する者はなぎ倒して、サルバトーレ・ドニは来日してしまったのだ。
実は、日本の正史編纂委員会は、ドニ来日の情報を受け取ると同時に、翔希と白井沙穂に連絡しようとしていたのだ。・・・が、沙穂にはすぐに伊織貴瀬経由で連絡がついたものの翔希には通じなかった。・・・まぁ、別れたばかりで傷心中の彼は、誰からも連絡が入らないように携帯電話の電源を切っていたのだから当然だった。
しかし、もし連絡が間に合っても、何の意味も無かっただろう。既にドニはこの国に入ってしまっていたのだ。彼の足を止める事が出来るのは、神かカンピオーネのみ。結局、何時かは戦うハメになっていただろう。日本は、彼に上陸を許した時点で既に詰んでいたのだ。
「さぁさぁ、すぐにやろう!ここなら誰にも迷惑はかけないよ?」
「ぐ・・・っ!」
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