第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その6
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実はBETAの着陸ユニットに対して、手をこまねいているばかりではなかった。
米軍は4年前のアサバスカへの着陸ユニット落下事件を受けて、迎撃システムの研究を開始する。
宇宙空間に核ミサイル迎撃システムを設置するというもので、その名はSHADOW。
ラグランジュ点L1、つまり太陽と地球の間に迎撃衛星を設置しようという案である。
しかし、軍事予算のほとんどを新規開発中のG元素爆弾にとられ、迎撃衛星の研究は滞ってしまった。
その為、計画からすでに5年の月日がたっても、衛星は一機すら上がっていない状況になっていたのだ。
さて、マサキはどうしたであろうか。
シュトラハヴィッツ少将とチェックポイントチャーリーで分かれた後、西ベルリンに入った。
西ベルリンのテーゲル空港から、チャーター機でハンブルグ空港へ向かった。
この時代の西ドイツ本土と西ベルリンを結ぶ航空路は1946年2月に設定された『空の回廊』と呼ばれる限定された空域でのみ飛行が許可されていた。
東ドイツ上空の高度は10,000フィート、空域の幅は20マイル。
(1フィート=30.48センチメートル、1マイル=1609.34キロメートル)
基本的に西ベルリンを管轄する米英仏の3か国と例外的にポーランドの国営航空の身が離着陸を許可されていた。
ハンブルグ空港に着くなり、マサキは彩峰から衝撃的な事を聞かされた。
結論から言えば、ソ連が発射した迎撃用の核ミサイルは、失敗した。
大気のない宇宙空間では核爆発の威力は半減し、着陸ユニットを破壊するまでには至らなかったのだ。
小惑星の直径が、どれほどかわからない。
もし、今回の迎撃に用いた核ミサイルがツァーリボンバーであったのならば……。
広島型原爆の1500倍の威力の原爆で破壊できないとなると、恐らく非常に大きい。
或いは、狙いが外れて至近距離で爆破したために、十分な威力が出なかったか……
米軍が行った1962年の高高度核爆発実験の際は、大気が少ないために予想通りの威力が発揮できなかった。
その代わり、爆発に伴う電磁パルスの影響で、大規模な停電がハワイ全島で起きるほどであった。
すでにゼオライマーはハンブルグ空港の駐機場に準備されていた。
マサキは、渡された宇宙服に着替えながら、彩峰に尋ねる。
「彩峰、射出物の場所は……出来る限り正確なデータが欲しい」
「まだ地球周回軌道には、入っていない」
その話を聞いて、マサキは内心ほっとした。
地球周回軌道に入っていないのならば、宇宙空間でメイオウ攻撃をしても問題はない。
ただ、宇宙空間にいきなりワープするにしても、正確な座標や目標がなければ移動はできない。
そこで、対地同期軌道上を飛んでいる人工衛星の位置を頼りにワープすることにしたの
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