第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その4
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破と図面の焼却。
簡単に復元できぬよう重要な部分に高性能爆薬を仕掛け、粉々に砕いた。
次に、鉄甲龍首領とパイロット、名だたる幹部の暗殺。
マサキ自ら、イングラムM10機関銃を使って、手を下したのだ。
最後に、ゼオライマーに施された幾重の防御機構。
ゼオライマーの生体認証には、マサキ自身のクローン受精卵を登録した。
一番の秘密である次元連結システムも同様であった。
主要部品を人間の姿に偽装させ、氷室美久というアンドロイドを開発した。
前の世界で、日ソ交渉の保険としてゼオライマーを欲した日本政府の陰謀によって、凶弾に倒れたことをまじまじと思い返していた。
クローン受精卵や自分の遺伝子を何らかの形で伝えるものを残していないことを、今更ながら思い返していた。
この世界に、俺の敵はいないと驕ってはいなかったか。
たしかに、秋津マサトの人格さえは消え去ったが、それだけに満足していないか。
この世に冥府を築き、世界を征服するという野望も道半ばだ……
見目麗しい女性に心奪われて、己が積年の夢をあきらめるとはどうかしている。
クローン受精卵を用意できぬのなら、生身の女を抱いて、孕ませれば、済むこと。
そんなことも気が付かぬとは、俺もだいぶ呆けてしまったものよ……
マサキは、何喰わぬ体をつくろって、改めてアイリスディーナを振り返った。
彼女の鼓動は、息が詰まるほどに、激しく跳ね上がる。
突然の事態に困惑しながらも、ドキドキと心を震わせていた。
「でも、ソ連とは言えども、何千万人の思想を操作するのは……さすがに無理でしょう」
一生懸命に背筋を伸ばして話し出すきっかけを作ろうとするアイリスディーナ。
どうしても口ごもってしまう様子の彼女は、思わず抱きしめたくなるほど初々しかった。
アイリスディーナは、本当に純粋で汚れも知らない表情で、それに似合わず大胆な質問をした。ズバッと切り込んでくることに、マサキ自身が、かえって困惑をした。
「ただ、出来なくもないことはない……。
特定の薬剤による集団洗脳。奴らはそれを実用段階まで達成した」
余りの衝撃に、未知の狂気に、アイリスディーナは身をすくませた。
「薬物といっても、既存の麻薬や向精神薬ではない。
阿芙蓉、ヘロインでは依存性が強すぎるし、人体への悪影響も大きい。
そこで奴らが作ったのは、指向性蛋白と呼ばれる特殊な酵素さ」
ベアトリクスは、マサキの言葉に驚いて、キッと目を吊り上げて言う。
「指向性蛋白?」
ユルゲンやヤウクからの話を聞いていたベアトリクスには、思い当たる節があった。
以前からソ連の兵士の態度が、BETAへの恐怖を喪失していて、何かおかしいと直感していたのだ。
洗脳
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