第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その4
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
披露宴は、こじんまりとして、ささやかな集まりだった。
呼ばれたのは、ヴァントリッツの住人たちと、議長の親しい間柄の人間。
多くが政府高官と言う事もあって、3時間ほどと短めだったのも異例だった。
ドイツの結婚式では、基本的に披露宴は深夜まで行うのが当たり前だった。
老若男女問わず、明け方まで踊ったり、酒盛りをするのが一般的だった。
まだ、ごたごたとしたざわめきの中で、マサキの声がはっきりと、皆の耳朶を打った。
「なあ、議長さんよ。
どうして俺のような凡夫に取り入った。訳を聞かせてほしい」
マサキの質問を受けて、部屋の中に、ちょっとしたざわめきが起きた。
議長が不敵の笑みを浮かべて、マサキを揶揄う。
「博士は、ずいぶんと意地の悪い質問をなされる」
マサキは不審な顔をした。東ドイツはまだ彼の支配下でない。
この国の政治家との交友や通商には、彼も尠なからぬ神経をはたらかせていた。
「お前たちが、俺に近づいた理由は、大体見当がついている。
この東ドイツが、国際社会の荒波の中で生き残るのには、道は非常に少ない。
例えば、シベリア移転でソ連が減らした武器生産を、東ドイツが担い、アフリカや中近東に安く売りさばく……
ユルゲンは、その様に考えたそうだな」
ちらりとベアトリクスの方を向いて、彼女の瞳をながめた。
「あるいは、力による統制でBETAに対抗する究極の戦闘国家の創造……。
なんて馬鹿げた絵空事を、考えているわけではあるまい。
圧倒的な物量を誇るBETAには、戦術機の突撃ぐらいで時間稼ぎにもならない」
ベアトリクスは、先ほどまでの高圧的な態度に比べて、どこか落ち着きのないように感ぜられる。
しきりに手を組み替え、机を触れたりして、視線を泳がせていた。
わずかに頬を赤らめているほどであった。
マサキは、ベアトリクスの名さえ出さなかったが、聴衆は誰に対して言っているかわかっているようだった。
「たしかに、支配の原理として、力は有効だ。
富や名声、知性など、この世のすべては移ろいやすいものだ……
だが、それは人間の心も同じではないか。俺自身がそれを最も実感している」
そういうと、マサキは、はるか遠い過去への追憶に旅立った。
人の想像もつかない所に、いつも人の表裏はひそんでいる。
思えば、ゼオライマーを建造している時から、鉄甲龍はマサキを忌むようになった。
うるさくなった。なければと、いとう邪魔物になった。
自分の力を凌駕する存在と、敵視するようになった。
けれど、それを表面化して、マサキと争うほどの勇気もない。
彼等の智謀は、極めて陰性であった。
そのことを察知したマサキは、密かに幾つの布石を打っておいた。
まず、八卦ロボの爆
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ