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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その7
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シュトラハヴィッツは、ただただ、解らない男、この一語につきる。
 本心、シュタージを敵とみるならば、そのシュタージの正規職員であり監視役でもある自分を、どうしてこう寛大にして帰すのか。
 手ぶらで送り返さぬまでも、重要な情報源として、これを拷問のすえ、敵状を知る手懸りとする。
そういうは、KGBやCIAなどの秘密警察、情報員の常識といってよい。
「それなのに……」
ゾーネは、疑いながらも、その怪しみに引かれて、ついつい犬の子の如く、シュトラハヴィッツのあとについて行った。
シュトラハヴィッツもまた、ゾーネを、野良犬ほども、気に止めていない風だった。

 しかし、マサキはシュトラハヴィッツの対応に気乗りしない感じだった。
「これは……」
彼は、シュトラハヴィッツに、ある種の不安を感じた。
 シュトラハヴィッツは、どうして、シュタージの現役将校と共にここにいるのか。
これは解らない方がもっともだった。
 およそ、わが身を狙う間者といえば、これを銃殺にしても問題ないのが当然なのに……
シュトラハヴィッツは、かつて自分を狙ったことも明確な下手人を、こうも許すのか。
 まさか、ゾーネとかいうシュタージ将校に、貸しでも作っているつもりなのだろうか。
マサキは、あきれるほかなかった。
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