第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その7
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出て来たことにすればいい」
と、やがて、彼はしずかに、
「少佐は、西ドイツに調略をかける中央偵察総局の将校。
出所としては文句はないでしょう」
それは、まんざらのでたらめでもなさそうな話し具合だった。
だが、ゾーネはシュタージの現役将校。
それは、余程割引きして聞かねばならない。
ハイム達は、その話を聞いた瞬間、
「シュミットと同じ、シュタージのくせに何を寝ぼけたことを」
と、いう言葉が、のどまで出かかっていた。
シュトラハヴィッツのしずかな眼は、やがてしげしげとゾーネの面を見まもっていた。
さて、別に言う事もないような無感動をそのまま置いて。
「いいのか……。
それをしたら、お前さんの派閥の長は……この闇資金の流れを知って、関与していたことになる」
「そうだぞ、ゾーネ少尉。アクスマン少佐の名前に傷がつくことになる」
しかし、ゾーネはあくまでも、懸命だった。
ハイムの問いに答えて、
「構いません」
と、息をつめた。
「KGBと刺し違えるのなら、アクスマン少佐も本望でしょう」
その話を聞き終わると、シュトラハヴィッツは不意に椅子から立って、
「西ドイツにヴァルトハイムという俺の知り合いがいる……。
その男に、ドイツ連邦検察庁の特捜部の検事を紹介してもらう」
彼らの顔に、さっと一脈の生色が浮かんだ。
それは力強い、全身全霊をかけて頼れる存在だった。
「よし、その線で行こう」
マサキは、話が一段落すると、市中に再び出かけた。
再び、バウムクーヘンを買うためである。
ドレスデン土産にバームクーヘンを買おうをしていたマサキは、納得がいかなかった。
色々思案した末に、護衛役の私服警察官に聞いて、別な店に行って買うことにした。
別な店では、外人と言う事で無理をして、バームクーヘンを用意してくれた。
出されたバームクーヘンは、4段リングで、1キロ50マルクほどだった。
店主によれば、数時間かけて、わざわざ焼いてくれたという。
なので、東ドイツマルクの代わりに、西ドイツマルクで支払い、買って帰った。
店主は、マサキの差し出した西ドイツマルクにひどく驚くも、喜んで受け取ってくれた。
夕方、薄暗くなってから戻ると、やっと話は終わったようだった。
ドレスデンの空港からベルリンに戻るべく、ヘリコプターを準備していた時である。
シュトラハヴィッツは、見送りに来たゾーネを認めると、
「おもわず時を過ごしたぞ。
同志ゾーネ。これから一人で帰るのも面倒であろう。俺が連れて行ってやるよ」
ゾーネは、あわてて、ヘリへ飛び乗った。
少し先には、ハイムとヘンペル少尉が、なお用心ぶかく、物蔭からじっとにらんでいた。
「シュトラハヴィッツ、本当にふしぎな男だ」
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