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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その7
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 マサキ一行は、翌日もドレスデンにいた。
午前中はシュトラハヴィッツ将軍たちと別れて、市街に出る。
半径2キロほどの小さい町なので、観光するのに4時間もあれば十分だろうと、徒歩で出かけた。
 東ドイツ有数の地方都市という割には、活気がなく、汚い建物ばかり。
教会も、オペラ座前広場も、ツヴィンガー宮殿も、どれも爆撃の後で、薄く煤けているばかり。
 驚くべきことに、道路にはまったく車が走っていなかった。
ポーランド方面に行くのは深緑の塗装をした軍用車両ばかり。
時折、薄汚れたトラバントやトラクターを見かける程度である。
 もっとも、路面電車がかなりの本数で走っているので、車は必要なさそうだったが。
社会主義国で成功した東ドイツでこれなのだから、隣国ポーランドはもっと貧しいのだろうか。
 マサキは、力なくため息をついた。
アイリスを、日本に連れ出したら苦労しそうだと一人思案していた。

 ドレスデンは、東ドイツの端で、外人が少ないせいもあろう。
マサキたちは非常に目立った存在だった。
 またこの町が、KGBとシュタージの秘密拠点であったこともあろう。
監視の目も、異様なほど、多いことに気が付いた。
 それとなく様子を見るつもりで、ぶらぶらとドレスデンの町の中を歩いた。
彼は至る所で町中の目という目が、己に注がれている。
マサキは、そのような気がして、妙に背筋に薄ら寒さを感じた。
 
 ホテルには台所もなく、ルームサービスもなかった。
その為、わざわざ朝食を市内に買いに行くしかなかった。
 近くの国営商店(ハーオー)に寄った際、店内を探索して、気になる点があった。
値段はかなり格安で、補助金等の政府による価格調整の影響もうかがえる。
 ライ麦パン、1キログラム34ペニヒ、ブレートヒェン、1個5ペニヒなど……
ドレスデン名産の菓子、アイアシェッケ (Eierschecke)も85センチ四方で 1マルク25ペニヒ。
驚くべき安さだった。
(ペニヒとはドイツマルクの補助通貨単位である。100ペニヒ=1マルク。
この貨幣単位は、東西ドイツとも同じである)
 目についたのは、青果類などの青物が少なく、ビールなどは逆に30種類以上あるの事。
社会主義特有の需要と供給を無視した、発注ゆえだろうか……

 店員の話によると、これでもBETA戦争での物不足は解消した方だという。
その話を聞いて、東ドイツに住む主婦やパートタイマーの職業婦人は大変であろう。
 朝から商店に並んでも、お目当ての品物がかえないという馬鹿げたことになるのだから……
マサキは、不思議と、そんな事ばかりを考えていた。

 
 市中のパン屋に寄り、アイアシェッケという、ドレスデン地方発祥のチーズケーキを買った。
その際、店員は、動物に
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