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神々の塔
第三十三話 アウトローの者達その一

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                第三十三話  アウトローの者達
 羅は日本の江戸時代の宿場町を思わせる階段の中を進みながらそのうえでこんなことを言ったのだった。
「建物が並んでいても迷路になるが」
「こうした迷路は厄介やな」
 施はその羅に顔を顰めさせて応えた。
「実に」
「壁の代わりに家があるけどな」
「その家の扉が急に開いてな」 
 右隣の家の戸を見つつ言った。
「敵が出て来るってな」
「あるからな」
「この階でもな」
「忍やら魔物なりな」
「何時出て来るかわからんからな」
「中にはな」
 羅は両手に青龍偃月刀を構えつつ言った。
「急に坊さんが出て来てな」
「術放ってきたりするな」
「不意打ちでな」
「屋根の上におったりもするしな」
「こうした迷路もな」
「厄介や」
「何かな」
 メルヴィルはその屋根の上を見つつ曇った顔で言った。
「こうした宿場町も時代劇で出るけどな」
「ああ、江戸の街だけやなくてな」
 トウェインも応えて言ってきた。
「出るけどな」
「風情があるけど」
「迷路になるとな」
「厄介やな」
「ああ、どうもな」
「ほんま家の扉や屋根の上からや」
 こうした場所からというのだ。
「急にな」
「敵が出て来て攻撃して来る」
「そんなことが常やからな」
「厄介な階や」
「ほんまにな」
「次の神霊さん達の中にな」
 芥川が四人に語った、彼もまた周囲を警戒している。
「国定忠治さんおるしな」
「赤城の月も今宵限り」
「虎徹持ってたな」
「江戸時代のヤクザ屋さんやな」
「かなり有名な人やな」
「ああ、その人もこうした場所と縁があったしな」
 宿場町と、というのだ。
「あの人思い出すわ」
「ヤクザ屋さんでも憎まれてへんな、あの人」 
 メルヴィルは国定忠治のこのことを話した。
「今も」
「悪人って言ったら悪人やろ」 
 羅も言った。
「やっぱりな」
「それでも嫌われてへんってな」
 トウェインはやや首を傾げさせつつ言った。
「それなりの筋は通してたんやな」
「ヤクザ屋さんでもヤクザ屋さんのルールあるからな」
 施はそうした世界のことを話した。
「それを守ってたんやな、あの人は」
「あの人はそれなりのものがあったからな」
 芥川はこう話した。
「人としてな」
「ヤクザ屋さんでもやな」
「人格やモラルはある程度あったんやな」
「それで今も人気がある」
「嫌われてへんか」
「歴史にも書き残されたしな」
 一介の無頼の者であってもだ、そうしたことがあるのも歴史というものの面白い一面であるということか。
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