第二章
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「天下に漆の技が広まり」
「天下はその分よくなるな」
「それを行う者がそこから糧を得て」
「天下によい漆塗りの器が広まり」
「それを使う者達が喜びます」
「そのことを考えてだな」
「これまで願わせてもらっていました」
親王は菩薩に正直に言われた。
「その様にしていました」
「そうであるな、その願い聞き届けた」
「そうして頂けますか」
「この国の漆の技確かにしよう」
「そうして頂けますか」
「そのうえで民を幸せにしよう」
この国のというのだ。
「漆の分な」
「有り難うございます、民達も喜びます」
親王は菩薩の言葉に涙を流して喜ばれた。
「では宜しくお願いします」
「それではな、そなたのこの度の徳は後の世にも伝えられよう」
「そんなことは望みませぬ」
親王は菩薩に即座に返した。
「ただです」
「この国の漆の技が確かになることがか」
「嬉しいです」
「そうか、ではな」
「宜しくお願いします」
こう言われ菩薩に深々と頭を下げられた、そのすぐ後に漆を扱う者達が閃き漆の技は即座に確かなものになり。
天下に定まった、それでだった。
誰もが親王に感謝したが親王は笑顔で全ては御仏のことと言われるだけだった、そして親王は後に。
帝になられる筈がそうはならなかった、だがそれでもそのお傍には多くの者がいて親王は不思議に思われた。
「私は帝ではないが」
「しかし徳をお持ちです」
在原業平、非常に整った外見の彼が答えた。
「ですから」
「徳か」
「はい、親王様にはです」
こう言うのだった。
「ですから」
「これだけの者達がいてくれているか」
「漆のことで」
業平は親王に微笑んで言った。
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