第三章
[8]前話
「しかしな」
「それでもですね」
「このまま僧兵達を放っておくとな」
「どうにもならなくなりますな」
「そうなる、それではだ」
「侍達をですか」
「増やそう、みちのくの乱もな」
後に前九年後三年の乱と呼ばれるこの乱もというのだ。
「何とかな」
「あの者達が抑えましたし」
「そうしよう、それにしても」
院は賽を出されその目を見て言われた。
「本朝を治める狆も思いにならぬものが三つある」
「その三つは」
「一つはこれだ」
その賽の目を見て言った。
「双六の賽の目だ」
「思う様には出ないですな」
帝も言われた。
「これは」
「うむ、そして次はな」
院はさらに言われた。
「鴨川の流れだ」
「時折溢れる」
「そして民も都も害するな」
「あれもですか」
「そして今度のことだ」
「僧兵達ですか」
「全く、三つもあるわ」
苦い顔で言われるのだった。
「朕の思い通りならぬものは、しかしそれが人の世だ」
「思いにならぬものがある」
「誰でもな」
それこそ院であられてもというのだ。
「そうしたものであろう」
「人であるなら」
「思えばな、しかし春日の神木を出されると」
あらためてこのことを言われた。
「どうにもならぬな」
「僧兵は只でさえどうにもならぬというのに」
「そこに神木までとなるとな」
「神仏はどうにもなりませぬ」
「その力を用いられるとな」
「人では神仏に勝てませぬ」
「こうした場合もな」
こう言って嘆かれるのだった、院も帝もそうなられるしかなかった。
僧兵達の話は今にも残る、ただ彼等自身が強いだけでなくこうしたことを行うので余計に厄介であったと。国を治められる方々ですらどうにもならない、そこまでの力があったと。
神木の強み 完
2023・5・12
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