第一章
[2]次話
Close Your Eyes
何度も会ってるけれど本当に奥手と言うしかない、私が今交際している彼に持つ印象は一言で言うとそれだ。
奥手、他に思うことは優しいとかよく気が付くとか気前がいいとか紳士とかだが兎に角最初にこれがくる。
そんな彼と一緒にいて私は何度か誘いをかけたけれどいつも乗ってくれない。私としては仲を進展させたいのにだ。
そんな風だ、それでどうしたものかと思っていながら今日は十度目のお互いの会社帰りのデートだった。
十回してもただ一緒にそれぞれの仕事の後で待ち合わせて夜の街を歩いてお酒を飲んで終わりだ、それで今度こそと思って普通なら彼にしこたま飲ませて酔い潰してとなるが。
生憎彼はお酒が強い、それも桁外れにだ。私はワインボトル二本で限界だが彼はウイスキー五本だった。それで翌朝何ともなかったという。
そんな彼を酔い潰すことは無理だ、そうなるとだ。
このやり方も無理だ、しかし十度目のデートでどうしようかと思っていたがここで私はある手段を思いついた。
彼と一緒に飲んだ後夜道を歩いている時彼に言った。
「ちょっといいかしら」
「どうしたのかな」
「目を閉じてくれるかしら」
「目を?」
「ええ、目をね」
笑顔で言った。
「そうしてくれるかしら」
「何かあるかな」
「それ聞く?」
「いや、悪いこととはね」
そうはとだ、彼は私に答えてくれた。
「思わないし」
「私を信じてくれるのね」
「だから付き合ってるんだよ」
にこりとした顔での返事だった。
「僕もね」
「その言葉聞けて嬉しいわ」
これは心からの言葉だ、やっぱり信用してもらえるならこんな嬉しいことはない、それで純粋にこの人と付き合えてよかったと思った。
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