第七十話
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第七十話 見物人はそのまま
カーミラも見物人達に気付いた、そのうえで博士に尋ねた。
「私は別にいいけれど」
「お客さん達のことか」
「勝負を見ているね」
「風情があるではないか」
博士は笑って答えた。
「戦見物なぞな」
「日本の戦いでは普通だったわね」
「昔は戦が起こるとじゃ」
戦国時代等のことである。
「近くの民百姓が弁当を作ってじゃ」
「見物に来たのよね」
「戦場から離れた場所に陣取ってな」
山等にそうしていたのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえでだったわね」
「戦見物を楽しんだものじゃ」
「そこは欧州とは違うわね」
間違っても近寄れば兵士達に何をされるかわかったものではない、それが欧州の戦いであったのだ。
「そうしたことが出来るなんて」
「そうであるな」
「まるで戦いはスポーツの試合みたいに思っている様ね」
「その通りじゃ」
まさにとは、博士はカーミラに答えた。
「まさにな」
「のどかと言うべきかしら」
「戦はあくまで侍のものじゃ」
日本ではというのだ。
「民百姓に直接関りはない」
「少なくとも戦見物出来る位は安全だったわね」
「そうじゃ、だからな」
それでというのだ。
「別にじゃ」
「博士も何もしないのね」
「むしろいてくれた方がよい」
博士は笑って答えた。
「お客さんがいてくれるならな」
「それでいいのね」
「よい戦は大勢の人が見てこそじゃ」
そうであってこそというのだ。
「映える、だからな」
「これでいいのね」
「先生達との勝負の前からいてくれておるしな」
「もうその時から見ているから」
「是非見て欲しい、諸君楽しむのじゃ」
博士はギャラリー達にも声をかけた。
「わし等の勝負を見てな」
「そうさせてもらうで」
「是非な」
ギャラリーも応えた、そうしてだった。
彼等も見ていくのだった、次の勝負がはじまるのを心待ちにしつつ。
第七十話 完
2023・6・14
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