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第三十二話 死神その六

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「ですから」
「わらわの思惑は防がれたか」
「そうなりました」
「そして運命は変わったか」
「あの兄妹については」
「忌々しい、しかし運命は途中幾重に別れようとも」
 その者はここで気を取り直す様にしておう言った。
「元、結末は一つ」
「人は、ですか」
「滅びる、そなたもそれを望んでいよう」
「わらわが望む筈がありません」
 これが丁の返事だった。
「貴女とは違うのですから」
「違う?何がどう違う」
「全く違います」
「そう言うか、しかしな」
「表と裏で」
「同じだ、わらわとそなたは」
 こう丁に言うのだった、その者は。
「そなたがどう言おうとな」
「あくまでそう言われますか」
「左様、そして」
「人をですか」
「滅ぼす、長きに渡ってわらわに全てを押し付けてきて辛いものを見せる様に強いてきてここから出すこともなかった」
「出られないのです」
 丁はそれは違うと返した。
「何故ならわらわは」
「五感がないからか」
「目は見えず耳は聞こえず」
 その身体のことを話すのだった。
「話すことも感じることもです」
「今更何を言っておる、しかし」
「貴女はそれでもですね」
「この様な場所そして夢からじゃ」
「出たいのですね」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「わらわを閉じ込めた世界をな」
「人の世を」
「滅ぼす、地球なぞどうなってもよいが」
 それでもというのだ。
「人はじゃ」
「滅ぼすのですね」
「何があってもな、その為の駒にな」
「彼はなる筈でしたね」
「人の心を失いな」
 そうしてというのだ。
「そうなる筈だったが」
「今は地の龍としてです」
「戦っておるな」
「そうです、きっと彼はです」
「そなたの望む様にか」
「動いてくれます、そして」
「他の者達もか」
「自分達の心のままです」 
 それに従ってというのだ。
「そうしてくれて」
「そしてか」
「ことを為してくれます」
「そうさせるものか」
「わらわも未来は見ていますが」
「わらわと同じであろう」
「しかしです」
 それでもというのだ。
「わらわは今は希望を見ています」
「あの者があの者のままでおってか」
「妹さんを殺さなかったので」
「そのことからか」
「まだ微かですが」
 それでもというのだ。
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