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第三十二話 死神その五

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「誰かが死ぬと」
「僕か神威君のどちらかが」
「ですから行ってもらいました」
「そうなのですね」
「貴方達の気持ちはわかります」
 それはというのだ。
「ですがまずはです」
「命があることですね」
「そうです、ですから戦いは」
「また今度ですね」
「それでお願いします」
「まさかです」
 丁の傍に戻っている玳透も言ってきた。
「僕に行って欲しいと言われて」
「驚かれましたか」
「はい、丁様をお護りするのが僕の役目なので」
「それでもです、今この場に行ける人はどなたもおられないので」
 見れば蒼氷と緋炎はいる、だが戦える者は三人だけだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「行ってもらいました、そして」
「神威と昴流さんをですか」
「助けてもらいました、三人共無事で何よりです」
「ああ、しかしだ」
 神威は丁にその目を鋭くさせて言った。
「次はな」
「彼、桃生封真をですね」
「絶対にだ」
 一も二もないという言葉だった。
「戦ってな」
「そのうえで、ですね」
「連れ戻す」 
 こう言うのだった。
「そうしていいな」
「はい、ですが今は」
「わかった、ではな」
「ゆっくりとお休み下さい」
「そうさせてもらう」
「僕もです」
 昴流も言ってきた。
「そうさせてもらいます」
「そうして下さい、そして貴方も」
 玳透にも顔を向けて話した。
「隣のお部屋にお茶とお菓子を用意していますので」
「そちらで、ですか」
「控えて下さい」
「そして何かあればですね」
「お願いします、貴女達も」
 蒼氷と緋炎にも声をかけてだった。
 そうして下がらせた、そして一人になったが心の中で何者かが彼女に対して不気味な声で言ってきた。
「まことに死んだのは」
「玳透さんでした」
「その筈だったのに」
「貴方が送りましたが」
「そなたを抑えてのう」
「ですがそうなりませんでした」
「何故だ」
 忌々し気にだ、その者は言った。
「この度も」
「貴女の思い通りにならなかった」
「あの者も心を失わず」
「妹さんを手にかけませんでした」
「何故そうなるのだ」
 やはり忌まわし気に言った。
「あの時わらわは」
「わらわが止めて」 
 丁はその者に夢の中で目を閉じて話した。
「庚達もです」
「結界を張ってか」
「彼もです」
「気を確かに持ってか」
「防いだので」  
 そうしたからだというのだ。
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