七十五 いつかの居場所
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イルカの問いに、ナルは、うん、と素直に頷く。
「このブランコだけが、昔からずっと一緒にいてくれたヒトとの繋がり…そんな気がするんだってばよ」
青の双眸を懐かしく細めて、にしし、とナルが笑う。
昔のひとりきりだった彼女の孤独を忘れさせたいと、イルカは彼女の後ろに回って、背中を押してやった。
ブランコがキイ…と軋んだ音を立てる。
「今のおまえの背中を押す人間はたくさんいるだろう。俺も含めて、な」
「……そうだってばね」
ようやく調子の出てきたナルの涙の痕が残る笑顔を見て、イルカもまた、笑みを返した。
「あのブランコ…おまえがつくったのか?」
「──さぁ?どうだったかな」
その光景を遠くから見ていた再不斬は、先ほどからずっと沈黙を貫いているナルトへ静かに声を掛ける。
再不斬の問いに、ナルトは曖昧に答えた。
幼い頃、ナルトとナルがふたりきりだった時の記憶の片隅にあるブランコ。
居場所も遊び場所も拠り所も何も無かった時に、ナルにつくったあのブランコが未だ健在している光景に、思い出が蘇る。
月明りの下で、幼いナルとふたり、ブランコを押し合った記憶が月の光を通して、ナルトには確かに視えた。
ブランコの上に昇った月の光が淡く、遠く離れたナルと、ナルトの髪に降り注ぐ。
同じ月の光だというのに同じ金色の髪だというのに、こんなに近くて遠い。
かつての美しくも儚い記憶に、ナルトは蓋をした。
「おまえはしばらく、この里には近づくな」
無言で佇むナルトの心境を察して、わざと再不斬は話題を変えた。
未だ不調そうなナルトの体調の変化が木ノ葉の里にある。
そんな気がして、釘を刺す。
「どうせアイツらに声を掛けてるんだろ」という再不斬の確信めいた言葉に、ナルトは同意を返した。
「…そうだな。彼らには申し訳ないが…任せるとしよう」
「あとはあの水月が上手くやりゃいいが」
そう言って顰め面する再不斬に、ナルトは笑った。
「なんだかんだ言って、気にかけてるよな。同じ霧隠れの出身だからか?」
「ハッ、あの馬鹿と同郷とか虫唾が奔る。一緒にされたくねぇだけだ」
事あるごとに首切り包丁を狙ってくる水月の顔を思い出して、うんざりと再不斬は肩を竦めた。
しばらくナルとイルカの光景を遠目で見守っていたナルトが、腰掛けていた木の枝から立ち上がる。
もう彼女は大丈夫だと確認して、最後に一瞥すると、ナルトは木の枝を蹴った。
あの思い出の場所から、いつかの居場所から遠ざかるようにして立ち去る。
どこか寂しげなその背中を追いながら、再不斬はわざと明るく声を
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