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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その6
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模の航空隊で、ヘリとセスナ機の他に、16機のイリューシン14を所有していた。
 イリューシン14は、東ドイツがライセンス生産した数少ない航空機である。
1956年から1959年までの間、人民公社ドレスデン航空機工場(VEB Flugzeugwerke Dresden)で80機が生産された。
(ドレスデン航空製作所は、今日のエアバス傘下のエルベ・フルークツォークヴェルケ社である)
 1955年に設立された、人民公社航空製作所(VVB Flugzeugbau)。
同社は、1950年代後半に、国中から集められた戦前からの技術者とともに航空機開発に望んだ。
 しかし、開発の遅れと、ソ連の援助中止という形で東ドイツの国産飛行機は立ち消えになった。
目指していたアフリカ、中南米諸国への販売も、市場原理を無視した社会主義ゆえの国際市場への甘い見通しの為、失敗した。
 1961年以後、ドレスデン航空機工場と社名を改め、航空機とヘリコプターの修理工場になった。
同社はワルシャワ条約機構軍と国家人民軍向けに、航空機の整備を専門とした。

 総裁が言った通り、ザンデルリングは、ドレスデンにいた。
シュタージが運営するホテルに潜み、そこで半月に渡る綿密な逃亡計画を練っていた。
 その日、シュタージ少将と、ホテルの一室で飲んでいるときだった。
不意に、官帽にオーバーコート姿の将校たちが現れて、
「お時間を頂けないでしょうか」と声をかけてきた。
  
 シュタージ少将は、ドレスデン県本部長で、KGBと近しい人物であった。
でっぷりと太った体躯に、剃り上げた頭からは、とても想像も付かない。
ザンデルリングをはじめとする党幹部とのつながりが噂される男であった。
   
 肥満漢のシュタージ少将を追い出した後、ザンデルリングはいらだちを隠さなかった。  
突如として現れたシュトラハヴィッツ将軍に、敵意をむき出しにする。
「何だね。君たち、これは少し失礼じゃないかね」 

「無礼は重々承知しております
単刀直入に申し上げましょう、同志ザンデルリング。
同志はSEDの主席、国政の首班になる気はございませんか」
「な、何だって」
ザンデルリングは、途端に驚愕の色をあらわした。
「何を言い出すかといえば、同志シュトラハヴィッツ将軍。
君がどういう考えで、シュタージと対決し……
どの思って、こういう若い軍人たちと徒党を組んでいるのか、分からない」
ザンデルリングは冷たく言い、曲がったネクタイに手をやる。
「だがね、君がどんなに行動を起こそうとも、党と癒着したシュタージは動かない」
「一党独裁体制は盤石と言う事ですか」
「その通り」

「シュタージは、国家、国政の上に根を張った巨樹なのだよ。
簡単に倒せる相手じゃない……。

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