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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その6
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ちる)の光を見いだしたようだった。
もうほかに手段もない切迫(せっぱ)つまった状況では、どうしてもその関係書類が必要なのだ。
「いや、それは絶好のチャンスだ。高潔な男なら、どんな餌にも転ばない。
だが、ザンデルリングは、高潔とは無縁の貪欲な野心家だ。
こっちが与える餌によっては、今の飼い主を、平気で噛みつけることもある」
 ついにシュトラハヴィッツ将軍みずから、この問題に踏み込んでいく。
マサキは紫煙を燻らせながら、会心の笑みを漏らした。


 さて。
 エルベ川の谷間に位置する、古都ドレスデン。
エルベ川の真珠とも呼ばれる、この町は、日本人にもなじみの深い町であった。
青年期の森?外も学び、同地に半年間滞在したほどでもある。
 ドレスデンは、かつては、ザクセン王国の中心地として栄えた古都でもあった。
同地には、ザクセン選帝侯アウグスト2世こと、アウグスト強王により作られた日本宮殿があった。
宮殿の中には、所狭しと東洋より持ち込まれた白磁が並んでいた。
 アウグスト強王は白磁に惚れこむあまり、自身でその白磁の生産に乗り出すほどの愛好家であった。
1710年に王立ザクセン磁器工場を設け、その研究に乗り出した。
後に、『白い黄金』として知られるマイセン陶磁器は、この酔狂人のおかげで発展したのである。

 ドレスデンは、ワイマール共和国、第三帝国の時代を通じ、ドイツでもっとも重要な都市のひとつであった。
戦前の1939年には、63万人の人口を擁し、華麗な文化都市として栄えた。
 だが、1945年2月13日から14日にかけて、米英軍の激しい空爆により壊滅的な被害を受けた。
この2昼夜の空襲の被害は、10万といわれる犠牲者を出した。
かつて、アウグスト強王により作られた古都は、その美しさから「エルベ川のフィレンツェ」と呼ばれていた。
しかし、英空軍の激しい爆撃により、そのほとんどは灰燼に帰した。

 東ドイツ政府は、チェコ国境に近い、この都市を政治的に注目した。
戦後復興として、社会主義的な町づくりをした。
市の中心部に文化センターを建設し、ソ連式の集合住宅を立ち並べた。
 しかし、ほんとうの戦後復興にはまだまだ遠く、いたるところは焼け跡だらけであった。
名跡であるフラウエン教会やツヴィンガー宮殿などは、瓦礫の山と廃墟が放置されていた。

 マサキたちは、空路ドレスデンに入った。
高速を使っても2時間は書かる175キロの道を、ヘリのおかげで30分弱で移動した。
最大速度、時速320キロを誇るMI-24の恩恵はすさまじかった。
ドレスデン市内にあるクロッチェ飛行場に降りたつと、基地の中で夜を待った。

 クロッチェ基地には、物資・人員の空輸を主任務にする第24輸送航空隊が置かれていた。
大隊規
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