暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
曙計画の結末
甦る幻影  その2
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
忠義だてに、精一杯な殿中の武官達は、競って崇宰の耳へしきりと風説をささやいた。
崇宰(たかつかさ)様、お聞きなされましたか。
アメリカが規制を強化するという話を」
 けれど、当の崇宰は、もとより世の常の男ではない。
人の告げ口や噂などに、すぐ動かされはしなかった。
 崇宰の姻戚(いんせき)(おおとり)祥治(しょうじ)中佐という人物がいた。
その鳳がある日、崇宰の屋敷に来たおりである。
義兄(にい)さん。
アメリカが近いうちに日本の輸出産品への関税強化をするという話は知っておりますか」
 崇宰家と鳳家は、親族同士だった。
同じ家から、姉妹を側室として迎え入れた間柄から、崇宰を義兄と呼ぶようになっていたのだ。
「祥治、君までがそんな戯言を信じるのかね」
「私の話を聞かぬうちに、判断なさるつもりですか」
「根拠のない話ではないと、証拠はあるのかね」
「口の軽い他人は、いざ知らず……。
この私が、何でそんな軽はずみな事で、義兄さんをわざわざ心配させましょうか」
 鳳は言い切った。
本当の心情には違いあるまい、崇宰にもそう思われた。
 それだけに、崇宰も鳳の言には、だいぶ心をうごかされたらしい。
だんだん聞き及んで行く内に、いつか理知のつよい彼も猜疑の塊になっていた。
それを執拗に訊ねる様は、むしろ鳳以上な動揺をうちにもってきたふうであった。
「……まこと、いまの話のようならば」
と、崇宰はもう抑えきれぬ興奮の色を、顔中に見せて。
「何か、対策を打たねばなるまい……」
「ここでご思案などとは、遅いくらいですよ。
昨年の11月に、ニューヨークの国連代表部にいる御剣の下に、CIA長官が訪ねたそうです」
「何!御剣公が……」
「今のCIA長官は、経済界との深い関係にある人物です。
御剣に、日米貿易交渉に関する裏話でも告げたに違いありません。
そうでなければ、米国の諜報をつかさどる人物が、わざわざ五摂家の一員と会う必要があるのですか」
 御剣とCIA長官が何を話したかは、秘中の秘だった。
米国におけるG元素爆弾完成の日近しとの話は、将軍と御剣しか知らなかったのだ。
 想像は、想像を呼んで、崇宰は恐怖に体を震わした。
まさか、御剣はCIA長官をそそのかして、自分の領域である対米輸出産業つぶしをするのではないか。
「御剣に、勝てる策はあるのか」
「ないわけでは御座いません。
天のゼオライマーという戦術機を駆る男を知っていますか」
 崇宰もマサキの事を全く知らないわけではなかった。
気にならないといえば、嘘である。
 ただ、マサキも油断ならないところのある男だ。
今は忠義面を決め込んでいるが、世界征服の野望を抱いていると聞く。
一応、斯衛軍の将校ということになっているが、崇宰は気を緩めていなか
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ