第三部 1979年
曙計画の結末
甦る幻影 その2
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開けた年は、1979年。
この異世界では、日本帝国の今後を左右する曙計画が終了した年である。
軍民合わせて216人の日本人が関わったこの一大プロジェクトは、今まさに終盤を迎えていた。
その年の始め。
マサキは、一月元旦というのに、京都の帝都城に来ていた。
年賀のあいさつと一連の欧州派遣軍の結果報告のためである。
彼は、斯衛軍の黒い特徴的な礼服を、身に着けていた。
まず上着は、詰襟で丈がひざ下まであり、肩には深い切込みが入っていた。
大元のデザインは、平安朝の頃、貴人たちが好んで着た狩衣装束に影響を受けているのだろう。
ズボンは、指貫という狩衣との対で着る袴を模倣したつくりであった。
ただひざ下まである革長靴を履き、上着の丈で隠れてしまったので大して目立たなかった。
美久も全く同じような服を着ていたが、婦人用の場合は着丈が足首まであり、腰が括れていた。
恐らく実用性を考え、奈良時代の女官朝服を基にしたのであろう事が一目見て分かった。
雪がちらつく寒空の中、一個師団の人員が着剣した64式小銃を構えて、中隊ごとに整列していた。
マサキも名簿上所属しているとされる中隊150名と共に待っていると、号令がかかる。
着辛い礼服を着て、寒さに震えていたマサキは、気だるそうに敬礼をした。
現れたのは、紫色の斯衛軍礼服を着た若い男だった。
1・5メートルはある長い黒漆で塗られた鞘の太刀を佩き、馬上から見下ろしていた。
その後を、青や赤の装束を着た者たちが、同様に騎乗して、列に続く。
マサキのいた場所は、列の真ん中ほどであったが、よくその男の顔が見える位置だった。
あれが御剣の甥で、今の日本を実質的に支配している政威大将軍か。
俺は、あのような男に頭を下げているのではない。
あくまで、日本の統治大権を持つ唯一の人物である皇帝に頭を下げているのだ。
このBETAに侵略されつつある世界であっても、変わることはあるものか。
そう、心の中で、将軍と五摂家への反抗心を、人知れず燃やしていたのであった。
新春年賀の閲兵式が終わった後、凍える身のまま、マサキは遠田技研に来ていた。
あの重苦しい礼服を脱ぎ去って、いつもの茶褐色の上下に、ネクタイの勤務服に着替えていた。
普段は襟が開いていて、着辛く寒い服と感じていたが、斯衛軍の礼服よりは温かく感じた。
雪に濡れて、湿っていたテトロン生地の服は、軍服として役に立つのかと思うほどだった。
さて、遠田技研の来賓室で待っていると、一人の男が入ってきた。
マサキに一礼をした後、名刺を差し出してくる。
名刺を見ながら、マサキは、
「詳しい話は、彩峰から聞いていると思う。
F−4ファントムの改造計画はどうなっているか、説明して
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