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冥王来訪
第二部 1978年
迫る危機
慮外 その1
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「国際金融資本の操る影の政府と言う物が有る。
やつらの間者は、いたるところに居る。
敵を欺くのには、まず味方からというわけさ……」
 マサキからの言葉を聞いた瞬間、美久の顔がパッと明るさを取り戻した。
急な態度の変化ぶりに、逆にマサキの方が引いてしまうほどだった。
「やはりそうでしたか。
あなたが、東ドイツやチェコスロバキアに近づいたのも……何かの考えがあっての事。
大軍団をもってして東欧への再侵略の機会をうかがう、ソ連を牽制するため。
あるいは、G元素爆弾を開発し、世界制覇の野心を隠そうともしない国際金融資本……
彼等の暴挙を阻止するための、計略であった。
そう信じて、ただただ……お待ちしていた甲斐がありました」
驚きのあまり、マサキは苦笑いを浮かべるぐらいしか、出来なかった。
「フハハハハ、呑み込みが早い。
流石に、優秀な推論型AIだ」
立て続けに、新しい煙草に火を付けながら、
「ついでに、ベアトリクスのことも明かしてやろう。
ベアトリクスが欲しい、我が物にしたい……半分本当で、半分は嘘だ。
本当の狙いはベアトリクスの夫、ユルゲン・ベルンハルトのほうだ。
やつは俺の分身として、欧州に工作をするためには、ふさわしい存在。
故に、俺はアイリスやベアトリクスに近づいた。
それだけの事さ」
 マサキは再び、美久との距離を縮める。
彼女の顔を、両腕の中にいれてじっと見ていた。
「何故その様な、回りくどい事を……」
 そういってしなだれてくる美久を、マサキは広い胸で受け止める。
マサキの表情に、硬さは残っていたが、口元は緩んでいた。
「ユルゲンは、東ドイツのエースパイロット。
軍人と言う立場だけではなく、奴は白皙の美丈夫で、SED幹部の娘婿、議長の養子だ。
時が来れば、政治的後継者として、いずれは立身出世しよう……
その時、ベアトリクスと政府が対立をしたらどうなる。
……ベルンハルトの進退に差し障るのは必至。
そうすれば、困るのは俺だ。
故にユルゲンに憎悪が向かわぬように、俺が悪人になったまでよ……」
 そういうと、二人は沈黙に入った。
要するに東ドイツに利用されているふりをして、彼らを利用しているのはマサキの方という事だ。
 結局のところ、マサキが東ドイツに友好的だと勘違いしたのは、ユルゲンの方である。
マサキのことを率直に評価してくれた純粋な青年将校だと、喜ぶべきなのだろうか。
少々複雑ではあるが、美久は今の所、ユルゲン青年に感謝することにした。

 濃厚な沈黙を破って、マサキから美久の唇を奪った。
美久は、マサキのたくましい両手を握りしめながら、唇を吸う。
 急激な恥ずかしさが、美久を襲う。 
その行為に驚き、美久はハッとマサキの体を突き放した。
「もとより俺の狙いは、世界征
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