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星河の覇皇
第八十四部第四章 続く会談その四十三

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「それはもう怨念に近いわ」
「怨念ですか」
「そこまで行くと恐ろしいですね」
「怨念の域に達しますと」
「それこそ」
「日本で最も恐ろしいのは何か」
 そうした話にもなった。
「歴史や古典を読むと書かれているわね」
「まさにその怨念ですね」
「それですね」
「怨念こそが最も恐ろしいです」
「怨霊が我が国では魔王ですから」
 これはキリスト教世界で言う魔王ではない、この宗教の魔王は悪魔の君主達のことを指すからだ。だが日本ではそうなるのだ。
「人の怨念が高まりますと」
「これ以上はないまでに恐ろしい存在になりますね」
「我が国には事実多くの怨霊の話があります」
「それを見ますと」
「そう、あれだけ恐ろしいものはなくて」
 それでというのだ。
「厄介なものはないわ」
「左様ですね」
「そしてジャバル副主席もですか」
「その怨念の持ち主であり」
「怨念に基づいて動いておられますか」
「だからこそね」
 それ故にというのだ。
「その行動は危ういものもあるわ」
「確かに有能ですが」
「結果を次々に出しておられます」
「しかしその根幹にあるものは、ですか」
「怨念ですか」
「それがありますか」
「アウトカースト、虐げられたそれがあるわ」
 それが彼の怨念だというのだ。
「だからね」
「それで、ですね」
「それ故にですね」
「ジャバル副主席は危険ですか」
「怨念を持っておられるからこそ」
「そうよ、アウトカースト層の権限の拡大と地位の向上の為に」
 まさにその二つの為にというのだ。
「彼は動いているわ、そしてその為にね」
「全てがありますか」
「マウリアの為というより」
「アウトカースト層の権限の拡大と地位の向上ですか」
「その為に動いておられますか」
「あの御仁は」
「そう、おそらくアウトカースト層をマウリアの全ての世界に進出させて」
 そしてというのだ。
「そのうえでね」
「アウトカースト層をマウリアの支配階級にするとですか」
「そう考えですか」
「まさかと思いますが」
「あの御仁はそれを考えていますか」
「そうよ、革命よ」
 伊東は目を光らせこの言葉を出した。
「それも血を流さないね」
「無血革命ですか」
「アウトカースト層による」
「それを考えていますか」
「そうなのですか」
「虐げられた者がその能力に相応しい地位を得る」 
 伊東はこの言葉を無表情で出した。
「一見素晴らしいことだけれど」
「その過程で何があるか」
「そう考えますと」
「血が流れますと」
「恐ろしいものがありますね」
「それは避けるという考えにしても」
 それでもというのだ。
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