第三十一話 墓参その七
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「急がないことよ」
「急がない、ですか」
「決してね」
「そうですか」
「そう、何があってもね」
庚はさらに言った。
「それはしないことよ」
「だから戦いが終わってもですか」
「一緒にいられる様にね」
「することですか」
「くれぐれもね」
「そうですね、この顔触れで」
封真は庚のその言葉に頷いて述べた。
「ずっといたいですね、俺としては」
「妹さんともかしら」
「正直に言っていいですか」
「もう知ってるから」
それでという返事だった。
「もうね」
「言っていいんですね」
「そうよ、貴方が言いたいならね」
「はい、俺は小鳥とです」
「これからもよね」
「一緒にいたいです」
「そうよね」
「戦いが終われば」
それからはというのだ。
「殺さないでいられましたし」
「そうよね。私もよかったと思うわ」
「俺が小鳥を殺さないで」
「貴方が妹さんを殺さないで済んで」
「それが運命でしたね」
「その運命が避けられてね」
そうなってというのだ。
「本当にね」
「よかったですか」
「ええ」
こう封真に答えた。
「運命が変わって、例え私達は人間を滅ぼしても」
「出来るだけ、ですか」
「その時まで死なないで済んで」
「滅んでからもですか」
「生き残る人が多いなら」
こう言い繕った、まだ仲間達に自分が考えていることは話すべきではないと考えて今はそうしたのである。
「それならね」
「いいですか」
「ええ、それでね」
「俺は戦いが終われば」
「妹さんのところに戻りなさい、そして」
封真に微笑みこうも言った。
「お友達ともね」
「そのこともご存知でしたか」
「ええ、だから言うわ」
庚の口からというのだ。
「そうしてね」
「戦いが終われば」
「一緒にね」
「いることですか」
「私はそれでいいと思うわ」
「そうですか、てっきりです」
「地の龍は人を殺すことを何とも思わないと考えていたのね」
封真に問うた。
「そうね」
「はい、ですが」
「それは違うわ、私達は人間だから」
「人間を殺すことにはですか」
「抵抗があってね」
そうであってというのだ。
「当然よ。痛みや悲しみもね」
「わかってですか」
「当然よ」
「俺もですか」
「貴方が貴方のままでいられて」
ここでも真実を隠した、その真実が何かは言わないで。
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