第三十一話 墓参その二
[8]前話 [2]次話
草薙は星史郎の動きを見て優しい目で言った。
「大事に思ってるんだな」
「そうでしょうか」
「動きを見てわかったよ」
こう言うのだった。
「毎月来てるだけじゃなくてな」
「それに加えてですか」
「ああ、あんたはな」
実際にというのだ。
「今もご両親を愛しているな」
「そうだと思わないですが」
「あんたはそう思っていてもな」
星史郎自身がというのだ。
「けれどな」
「僕は、ですか」
「ああ、ご両親に愛されていてな」
そしてというのだ。
「あんたもな」
「殺した時に何も感じませんでしたが」
「あんたが気付いていないだけだよ」
そうだというのだ。
「実はな」
「痛みをですか」
「感じていてな」
「愛情もですか」
「あるさ」
「そうなのですね。僕は」
「そうですね」
遊人も言って来た。
「僕もです」
「そう思われますか」
「はい、僕達にも親切ですし」
「普通に接しているだけですよ」
「それが普通ならですよ」
「僕は、ですか」
「人のことがわかっているので」
だからだというのだ。
「親切です、そして」
「痛みもですか」
「感じています」
そうだというのだ。
「間違いなく」
「誰に何をしても何も思いませんでしたが」
「そうは思わないですよ、では僕が死にそうならばどうしますか?」
「決まっているじゃないですか、助けますよ」
星史郎は微笑んで答えた、雨の中で墓は次第に奇麗になってきている。
「お友達ですから」
「そうですね」
「はい、絶対に」
こう言うのだった。
「そうしますよ」
「それが答えですよ」
「僕がどういった人間か」
「そうです」
「自分ではそう思っていても」
「実は違っていたりしますね」
「はい、主観と客観ですね」
星史郎は遊人に顔を向けて微笑んで答えた。
「その違いですね」
「自分が見る自分と人が見る自分はまた違います」
「まさにそうですね」
「またその人それぞれで」
「客観も違いますね」
「ですがおおまかに言いまして」
「主観と客観に分けられますね」
遊人にあらためて言った。
「そういうことですね」
「はい、そして僕達はです」
「僕は人の痛みがわかってですか」
「人の気持ちもわかる」
「そうした人ですか」
「例えばです」
遊人はここでこう話した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ