第二章
[8]前話
「空の旅を楽しんでもらうぞ」
「わかりました」
佐藤も頷いた、そうして小学四年生の愛野遥黒髪をポニーテールにしあどけない顔立ちだがサングラスをかけて右目を隠している彼女にだった。
フライトアテンダントの奈良里香黒髪を後ろで束ね丸く小さな顔に愛嬌のある顔がある一六〇位のすらりとした彼女をつけてだった。
足下まで注意して空の旅を終えて飛行機から降りるまで接させた、それが終わってから山崎は空港の食堂で佐藤と奈良に話した。
「特別扱いはしないがな」
「障害のある分はですね」
「ケアしないと駄目ですね」
「だから奈良君についてもらってな」
当然時間があれば他の客の世話に行ってもらっていた。
「空の旅を楽しんでもらったんだ」
「本当に誰でもですね」
佐藤はハンバーガーを食べつつ応えた。
「空の旅はですね」
「楽しんでもらうんだ」
「お客さんなら」
「俺達は空の仕事だな」
「それならですね」
「空の旅の間は責任を以てだ」
そのうえでというのだ。
「誰でもな」
「楽しんでもらわないと駄目ですね」
奈良はサンドイッチを食べつつトーストを食べている山崎に言った。
「絶対に」
「ああ、だからな」
「それで、ですね」
「これからもな」
二人に言うのだった。
「そのことは気を付けていってくれよ」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
二人も確かな顔で頷いた、山崎はこの考えと行動でも社内で評判だった。そして後日。
その少女から山崎宛てに感謝の手紙が来た、あの時の空の旅を楽しいものにしてくれて有り難うと。そこには彼女と両親の写真もあったが。
角膜移植を受けた右目は見える様になっていた、サングラスはもうなかった。満面の笑顔でまた山崎が操縦する飛行機に乗りたいとだ、その手紙には書いてあった。
その手紙を見てだ、山崎はこの仕事をしていてよかった、これからも人を大事にして仕事をしていこうと誓ったのだった。
パイロットの心得の一つ 完
2023・8・22
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