第三十一話 天平の宴の後でその七
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「それで鰻と言えば」
「ゼリーなん?」
「それがあるけど」
「鰻のゼリーって」
「まずいで」
一言で言い切った。
「皆言うてる通り」
「うち実は食べたことないねん」
「ほな食べんままでええ」
これがシェリルの返答だった。
「別にな」
「そやねんね」
「ほんままずいからな」
「まずいもんは食べんでええ」
「経験で食べたいんやったらええが」
それでもというのだ。
「そやなかったらな」
「食べんでええんやね」
「まあオーストラリアはずっとましやけどな」
イギリスよりもというのだ。
「羊に牛にシーフード」
「食材が豊富で」
「それがあるからな」
「イギリス料理よりええんやね」
「イギリスやとカレーを食べる」
この料理をというのだ。
「これがや」
「無難やね」
「一番な、カレーやったら」
「美味しく食べられるんやね」
「そやからな」
だからだというのだ。
「あそこに行ったらな」
「カレーやね」
「朝食とかティーセットはよおても」
こうしたものは美味いがというのだ。
「そやけどな」
「基本やな」
「ほんままずい」
言葉は一つだった。
「マロニーがいつも言うてる通りな」
「日本の食文化はこの世の天国やて」
「そしてイギリスの食文化は」
「この世の地獄やて」
「そやから鰻のゼリーも」
これもというのだ。
「まずいもん食べたいならな」
「食べたらよくて」
「そやないとな」
「食べるんでええんやね」
「そういうもんや」
こう言うのだった、そして。
宿屋に入ってだ、一行は戦の前に身体を休めることにしたがそこで一行が食べたのはその鰻丼であった。
綾乃は鰻丼を食べてだ、満面の笑顔で言った。
「この鰻丼独特やね」
「ご飯の下に鰻があるっていうのは」
リーはその鰻丼について述べた。
「大阪のあのお店か」
「確かいづも屋やったな」
中里が応えた。
「そやったな」
「そやな、織田作之助さんの小説にも出てた」
「あのお店の鰻丼やな」
「閉店したって聞いてるが」
リーはその目を鋭くさせて言った。
「残念ながら」
「ああ、船場に後継のお店あるわ」
芥川が言ってきた。
「名前がそのまま受け継がれたな」
「そうなんか」
「千日前の方は閉店しても」
なんばグランド花月からすぐの場所にあった。
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