第二章
[8]前話
「国木田家のご当主じゃないの」
「あの大地主の」
「戦前は広島の地方財閥で」
「今も広島で幾つも会社を持ってる」
「あのお家のご当主なの」
「そう、八条グループとも縁の深いね」
自分達の夫の勤め先ともというのだ。
「八条グループの傘下グループだけれど」
「長内さんそのご当主と関係あったの」
「そうだったの」
「何でもお父さんが」
陽子のというのだ。
「国木田家の企業の社員で結婚の仲人もね」
「してもらったの」
「あの人に」
「ご主人とのそれも」
「この団地にご当主のお孫さんのお一人がイベントで来られるそうで」
その主婦はさらに話した。
「その挨拶に来られたらしいけれど」
「長内さんあの人には頭が上がらないのね」
「そうした事情があって」
「だからああなのね」
「そうみたいよ。お父さんや仲人のこと以外でも色々お世話になってるから」
即ち恩義が深いからだというのだ。
「ああした風よ」
「そうなのね」
「長内さんの奥さんにもそうした人いるのね」
「まさに団地の顔役なのに」
「何でも仕切れる強い人なのに」
主婦達は陽子にもそうした人がいるのだとわかった、それで団地の中の催しで国木田家の女の子が一人神戸にある学校から来てだった。
古武術の演武を袴姿で披露した、陽子はその間も孫娘の活躍を暖かい目で見る国木田家の当主に気を使っていた。
そんな彼女を見てだ、南田家の夫婦も話した。
「誰にも頭が上がらない人がいるけれど」
「長内さんの奥さんもなのね」
「物凄くお世話になっている人には」
「誰でも弱いのね」
こう話して納得した、だが。
その孫娘国木田碧が演武の後で陽子の中学生の息子夫譲りの長身と自分譲りの整った顔立ちの彼に婿にならんかと誘いをかけられ戸惑っているとこう言った。
「息子にはちゃんと彼女さんいますから」
「ああ、そうけえ」
「はい、そうしたお話はなしで」
「仕方ないのう、初夜を共にしようと思ったのじゃが」
「初夜なんて言葉出してはいけません」
彼女にはいつものちゃんとした陽子だった、夫婦も団地の他の人達もそんな彼女を見て思わず笑った。
「長内さんはああでないとね」
「らしくないわね」
いい意味でのボスママだとだ、思うのだった。誰に対しても言うべきことはしっかりと言う彼女であると。
ボスママより強い人 完
2023・8・20
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