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イベリス
第百十二話 九月が進みその一

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                第百十二話  九月が進み
 制服はまだ半袖だ、だが。
 九月が進むとだ、咲は次第に涼しくなってきたことを感じて家で仕事から帰った父に対して言った。
「もうそろそろ涼しくなってくるわね」
「所沢はもう結構な」
「寒いの、あっち」
「特にドームはな」
「ペルーナドームね」
「あそこはな」
 この球場はというのだ。
「物凄いからな」
「あそこ寒いので有名よね」
「傍にスキー場もある位だ」
「それならね」
「開幕の時なんてな」
「滅茶苦茶寒いのよね」
「雪が入ってきたりするんだ」
 実際にそうしたことがあった。
「風だってな」
「屋根の下から入って」
「寒いんだ」
「あそこはそうなのね」
「雨も入って来るんだ」
 ドーム球場ではあるがだ。
「あそこはそうした場所でな」
「東京より寒いのね」
「それでこっちに帰ってきたらな」
 東京の方にというのだ。
「暑くなったってな」
「思うのね」
「それだけ違うぞ」
「所沢はそうなのね」
「そうだ、というか東京自体涼しいぞ」
 父はこの街のことも話した。
「熊谷は論外にしてもな」
「あそこは日本一暑いのよね」
「そうだけれどな、東京は平地で風があるからな」
「からっ風ね」
「冬はそれが吹くしな」
「夏も風があって」
「平地で前に海もあるしな」
「涼しいのね」
「地形的に熱も溜まりにくいんだ」
 東京はというのだ。
「だからな」
「涼しいのね」
「京都の夏なんてな」
 古都であるこの街はというのだ。
「もうな」
「あそこ盆地だから熱が溜まるのよね」
「そうなってな」
「夏暑いのね」
「逆に冬は寒いんだ」
 この季節はというのだ。
「あそこはな」
「真逆に」
「それ有名よね」
「春と秋はよくてもな」
 この二つの季節はというのだ。
「けれどな」
「夏は暑くて冬は寒い」
「それで夏の暑さはな」
 京都のそれはというのだ。
「もうな」
「かなりのものね」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「京都に行った後は東京の夏がな」
「涼しく感じるのね」
「随分な」
「成程ね」
「東京は夏は過ごしやすい街なんだ」 
 父は娘に真面目な顔で話した。
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