第一章
[2]次話
家族になった鴨達
イギリスウエストヨークシャー州リーズ在住のフィル=ガーナーはもう定年を過ぎて妻のジュリアと共に年金生活を送っている。二人共白髪で穏やかな顔をしている。
その夫がだ、息子のフリーザと共に湖での釣りから帰って来た時妻は彼の手に一羽の鴨の雛を見付けて言った。
「鴨も釣れたの」
「魚は釣ったけれど鴨は保護したんだよ」
これが夫の返事だった。
「湖に一羽だけいたんだ」
「そうなの」
「それでなんだ」
街で公務員をしている息子も言ってきた、ダークブラウンの短い髪で長方形の顔をした長身で穏やかな青い目の若い頃の夫そっくりの外見である。
「湖の管理人さんとお話して」
「このままじゃ危ないってことになってね」
夫がまた言った。
「うちにつ得て来たんだ」
「そうなのね」
「それでだけれど」
夫はさらに言ってきた。
「うちで飼おう、鴨の飼い方をネットで調べて」
「そうしながらなのね」
「ご飯もあげてね」
こちらも忘れずにというのだ。
「泳ぐのはお庭のお池で」
「水鳥だしね、鴨は」
「そうしていこう」
「わかったわ、連れて来たならね」
これも縁とだ、妻も頷いてだった。
夫婦で飼いはじめた、息子は妻と一緒に近くに住んでいて時々助けに来て夫婦で鴨の飼い方をネットで調べて学びながらだ。
育てていった、鴨は雌でフリーダと名付けられ幸いすくすくと育っていった。
それでだ、フリーダが大きくなったところで彼は妻に言った。
「元々野生だし」
「送り出すのね」
「そうしようか」
「そうした飼い方をしていたしね」
「うん、そろそろね」
「わかったわ」
妻は夫の言葉に頷いた、そしてだった。
フリーダを実際に送り出すことにした、彼女は自然と飛び立っていった。二人は彼女の幸せを願ったが。
数ヶ月経ってだ、何と家の庭に。
「クワ」
「クワッ」
「フリーダ?」
「それでその隣にいるのは旦那さん?」
夫婦は彼女が庭に夫と共にいるのを見て目を丸くさせた。
「ひょっとして」
「そうなのか」
「クアッ」
その通りという様な返事だった、そしてだった。
フリーダは今度は夫と共に二人と一緒に暮らす様になった、二人は夫の方をフレッドと名付けた、二人は彼女の思わぬ帰還に最初は驚いたが。
すぐに笑顔で迎え入れた、しかしそれだけでなく。
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