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青空を知ったチンパンジー
第一章

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                青空を知ったチンパンジー
 アメリカの霊長類を研究している生物学者であるアンドリュー=ハローランは学会においてあるチンパンジー達の映像を紹介した、それは二十八歳位の雌のチンパンジーが恐る恐る今自分がいる建物から出てだった。
 それを向かい合って待っている彼女と同じ位の年齢の雄のチンパンジーの祝福を受けて抱き合っているものだった、それを見てだった。多くの学者達は感動した。
「人間以外の生きものにも心がある」
「勿論チンパンジーにもだ」
「だがこうしたことがあるのか」
「生まれてから殆ど外に出られなかった友人が外に出ることを促して」
「外に出た彼女と喜び合って抱き合う」
「人間みたいな行動を取るケースは多いが」
「こうしたケースもあります、この雌はバニラといいまして」
 ハローラン、癖のある薄茶色の髪の毛で広い額を持つグレーの目の眼鏡をかけた長身の白人の彼は自分と同じ分野を研究する学者達に話した。
「二十八円もの間。生まれてほぼすぐにです」
「実験動物といてですね」
「育てられ暮らしていて」
「ずっと建物の中にいて」
「外に出たことがなかったですね」
「彼女がいた施設が閉鎖されまして」
 そうしてというのだ。
「保護されて外に出られる様になりましたが」
「こうしてですね」
「友人の励ましを受けてですね」
「そうして外に出る様になりましたね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「そうなりました」
「素晴らしいことです」
「こうしたことがあるとは」
「最高の発見です」
「このことは覚えておかねばならないですね」
 その映像を視聴した学者達は手放しで賞賛した、それを見たハローランもこの映像を紹介してよかったと思った。
 そして発表した後で彼はバニラが保護されているフロリダ州フォート=ピアーズにあるチンパンジーの保護施設を訪れた。
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