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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第六十九話 挟撃
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宇宙暦793年6月28日10:40
フォルゲン星系外縁部(アムリッツア宙域側)、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、
アムリッツァ駐留軍第一任務部隊、旗艦アストライオス、
宇宙艦隊司令部、ヤマト・ウィンチェスター


 主要航路上に存在するフォルゲン星系を中心とした宙域には、二十個ほどの恒星系がある。主要航路は商船も行き交うので通常は戦闘を避ける筈だが、既にアムリッツァを犯されて自領を守る帝国側はそうも言っていられない。この宙域で最大の人口を有するフォルゲン星系を守る姿勢を見せなければ、在地領主達がこちら…同盟側に靡く恐れがある…とでも帝国は考えているのだろう。
 まあ、それはともかく、対する帝国軍は五万隻…。
こちらの迎撃作戦自体はオーソドックスなものだが、戦力配分と人員の配置に苦労した。何しろ宇宙艦隊司令長官代理がまだ戦場にいないものだから、全て俺が考えなくてはならなかった。
『…戦線維持、迎撃に徹せよ。責任は本職が負う、私が到着するまで宇宙艦隊司令部の現地スタッフが信ずる行動を取れ』
大胆すぎるだろ…失敗したらアムリッツァどころかイゼルローンまで奪い返されかねない。冷静で懐疑的…どこがだよ…。

 「そんな難しい顔して、何考えているんだ?長官代理の代理殿」
笑いながら近付いて来たのはマイクとローザス少尉だった。
少尉は少し困った顔をしていた。マイクにデートでも申し込まれたのだろう。
「いや、まさかこんな事になるとはと思ってね」
「まさかも何も、お前が順当に昇って行けば何れはこうなったさ。少し順序と時期が早まっただけさ。心配すんな」
「そうなのかもしれないけど…」
「こっちの事よりボーデン星系が気になるんだろう?」
「まあね」
戦線維持と迎撃、フォルゲンに敵がいるからと言ってボーデン宙域をほっとく訳にはいかない。それで四個艦隊を向こうに回したんだが…作戦指示は宇宙艦隊司令部が出さなくてはならない。ルーカス大将の責任は俺が取る、という言葉を信じて、宇宙艦隊司令部のスタッフ…俺達の事だが、そのスタッフも二つに分けた。
宇宙艦隊司令部としてフォルゲン宙域にて指示を出すのは俺、ボーデン宙域で指示を出すのは…ヤンさんだ。ヤンさんはまだ佐官だから、コーネフ提督の補佐という形にはしてあるものの、提督達から反対意見が多数出た。彼等にとって『エル・ファシルの英雄』はまだまぐれ、作られた英雄なのだ。軍隊という組織の常識に従っても佐官が提督達を差し置いて指揮を執るなどあり得ない事だ。無理を通すのだから反発があるのは当然の事だった。ルーカス大将が前線に到着するまでの時限措置とはいえ、これで負けでもしたら俺もヤンさんも退役は免れないだろう。

フォルゲン方面:
アムリッツァ駐留軍第一任務部隊(タスクフォース・アルファ)
宇宙艦隊司令部

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