第九十話 欲情の自覚その十三
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「まあね」
「側室さんはですね」
「愛人さんでしょ」
今で言うと、とだ。店長は話した。
「だったらね」
「まだいいですか」
「私としてはね、それでねねさんは不倫とかはね」
「する人じゃなかったですね」
「何か大坂城でも秀吉さんと名古屋弁でお話する様な」
当時で言うと尾張弁である、言うまでもなく彼がいた織田家の者達も多くがこの言葉を用いていた。
「そんな風だったらしいわ」
「飾らない人だったんですね」
「ええ、加藤清正さん達の親代わりでもあった」
「お母さんみたいな感じですね」
「そんな人でね」
ねねはというのだ。
「不倫とかとはね」
「無縁だったんですね」
「そうよ、まあ秀吉さんはそんな人ってことで」
それでというのだ。
「覚えておいてね」
「わかりました、ゴムのことと」
「どっちもね」
「そうしていきます」
かな恵は店長に確かな声で答えた。
「特にゴムのことは」
「大事なことだってわかったでしょ」
「よく」
「ええ、こうしたことは学校の先生が何を言ってもね」
それでもというのだ。
「もうね」
「勉強してですね」
「知っておいてね」
こう言うのだった、店長も。
「本当に」
「そうします」
「いざって時に自分を守ることだしね」
「そう思うと大事ですね」
「とてもね」
「そうなんですね」
「このことはね」
また言うのだった。
「いいわね」
「わかりまいた」
五人で頷いてだった。
そうしてこのことを頭に入れたうえでアルバイトも励んでいった、その様にしてこの日も過ごしたのだった。
第九十話 完
2023・5・15
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