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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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た。少年は疑いも知らずその一瞬を掴み、矢をひうと放つ。矢は音を裂くような高調子を響かせながら、狙い定めた藁人形の、腕を掠めて地面に虚しく落ちていった。
 背後から苦笑交じりの息が漏れるのを聞き、その少年、ミルカは忌々しげに目を遣った。苦笑を浮かべた騎士トニアは、彼に向かって言う。

「・・・また失敗だな、ミルカ」
「練習すれば上手くいきますよ」
「それは少なくとも今日ではなさそうだ。もう大分日が暮れてきている。・・・だが教授する時間はありそうだ。貸してみろ」

 城壁の向こう側に向かって沈み込んでくる太陽を見て言うと、トニアはミルカが持っていた短い弓を受け取り、筒から一本矢を抜き取って弦に構える。丁度人差し指の上の辺りから鏃が出る形だ。

「それほど力を入れずとも、この弓であれば矢は飛ぶさ。伸ばした腕と並行するように弦を引く。矢筋を通すんだ」

 そう言いながら藁人形へと狙いを定め、手首ではなく、肩と肘を上手く使いながらトニアは弦を引いた。上から見れば真っ直ぐに引かれている事が分かるだろう。

「引いた時は体はぶれては駄目だ。力が入らなくなるし、弓の正確さが欠けてしまう。必ずイメージするのは・・・一直線だ」

 トニアはそう言って、一瞬息を詰まらせると、軽く引き手の力を抜いた。途端に弓から矢が放たれ、先の一矢以上の鋭さを保って宙を裂き、藁人形の股間に真っ直ぐ突き刺さった。余談ではあるが、人形の頭部と胴体には的が飾られており、既に幾本かの矢が刺さっているが、股間はこれが初めてである。

「・・・あー、今のは痛い」
「いや分かりますよ、馬鹿にしてるんですか?私、こう見えて男ですよ?」
「男の寝台に潜り込むの奴がか?」
「執政長官を愚弄しないで頂けますか・・・?」
「悪かったな、お前の親代わりを愚弄して。暫くは控えておこう」
「暫く・・・?」

 からかうような笑いを聞かされて、ミルカは嫌気が差したかのように顔を顰めた。慧卓の友人というのはどうしてこうも一癖、二癖のある人間が多いのか時々疑問に思う。この騎士も然り、馬鹿な兵士二人も然り。そして熊のような騎士団長然り。

「お前ら、喧嘩はいかんぞ。騎士ならば、文句は剣で語るものだ」
「・・・出ましたね、化け熊」
「ふむ、遂に私も化け物扱いか。もっと早くに言われてもよかったのだがな」

 特にこの人物、屈強な魔獣すら御し得そうな程の巨漢、熊美は個性を極めていると言ってもよかった。仲が良くなると本来の口調に戻るというのだが、はっきりいってそのままでいて欲しい。舞台劇の山賊の棟梁にも似たごつい顔で女の言葉を面と向かって喋られた日には、はっきり言って卒倒しても可笑しくないものであった。

「ミルカよ、手数は増やしておいた方が良いぞ。お前は体躯が小さいし、膂力も無
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