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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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を遠目から、それも一軒の建物の幕の内から覗く瞳があった。瞳の数は四つであり、一方は興味深げに、一方は敵愾心を燃やしている。その二つの影、若き人間とドワーフは口々に言う。

「・・・矢張り追ってきたようだな、あいつ」
「あの餓鬼か?知り合いか?」
「王都でやり合った仲だよ。度胸が据わっているのが気に入らん」
「へぇ・・・?」

 瞳の一方、チェスターは気に食わぬといった様子で悪態をつく。その一方のアダンは、面白がるように付き合いが長くなりつつある相方を見詰めた。視線の変化に気付いてチェスターは瞳を細める。

「なんだ、その目は」
「お前、意外に良い目が出来るじゃないか。ヴォレンドの本を見てた時よりも、断然その方が良いぜ」
「・・・私の本命はあくまでも狂王の秘宝だ。それ以外に目移りはせんよ」
「・・・どうぞ、御茶です」

 後ろから蚊の鳴くような声が聞こえてアダンは振り返る。一人の可憐な少女が盆に御茶を載せてやってきたようだ。ふと、少女が足元をふらつかせて盆を斜めにしかけるが、咄嗟にアダンが助けたために事無きを得た。

「おいおい、大丈夫かい?」
「申し訳ありません・・・目が見えぬものでして」
「あ、ああ。別にそういうのを責める心算は無いんだけどよ・・・」

 少女は恥ずかしがるように盆に載った御茶をアダンに押し付ける。

「すみません・・・失礼します」
「あっ・・・」

 薄暗い室内の中を少女は踵を返し、どこか危うげな歩き方で消えて行った。

「なんか心配だなぁ、あの嬢ちゃん」
「・・・目移りしないでくれよ、アダン殿」
「わ、わかってるって」

 そう言いつつもアダンの瞳には純粋無垢な心配の念が満ちており、若き人間は小さく息を吐く以外に出来る事等無かった。外の諍いの声は既に無くなっており、鳥の囀りのように舞い降りた一時の見物は消え失せ、再び何をするでもない暇が生まれてしまった。此処に篭る以上、己のする事と言えば読書と軽い肉体の鍛錬のみである。
 チェスターは読破手前の本棚へと向かい、窓の光を頼りに本の捲って閲覧していく。芋虫の生態など鼻から興味は無かったが、何も見ないよりかはマシなのであった。




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 一人の少年が気を張り詰めていた。大きく腕を開いて弓に矢を番え、その弦をきりきりと引き絞っている。将来の有望さが窺える美顔は常以上に緊迫し、後ろから注がれる視線を気にしないとばかりに眼前の目標を睨んでいた。

「・・・すぅ・・・はぁ・・・」

 深い呼吸をする。雲渡る空は茜を帯びてきて、風は俄かに強めである。弓を引くタイミングを少年は石の如く窺っていた。
 そうこうして、一瞬、太陽が雲間に隠れたと同時に風の鳴りが治まっ
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