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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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物の中でも最上級のそれを誇らしげにカップの中へと注ぎ、二人はその新鮮でさっぱりとした味わいを喉へ流していった。
 一方で王国の二人もまた、賢人らと同じような行動を取っていた。いわずもがな、密談であった。

「どう思う、あの方々を」
「・・・どうにも態度がはっきりし過ぎていて、逆に怪しく感じました。悪化した情勢を話し合いで何とかしたいとは言っておきながら、イル殿はやけに俺達に攻撃的ですし、ニ=ベリ殿はとても協力的だ。二人して態度が反対的過ぎる。あの態度の反発のしようは俺には不自然に思えます。もしかしたら二人は、裏では手を組んでいるかも」
「我等の心中を探り、利用するためにか?それは幾らなんでも邪推だろう。政治的に勢力的にも対立しているのだぞ。手を組むというのはあり得ん。外交に頼らず、内輪で何とかできるという確信が彼らにはあるのだろう」
「そ、そうですよね・・・。でもなぁ・・・」
「邪推を掘り返しても仕方の無い事だ。次の事を考えろ」
「次といいますと?」
「五ヵ月後の賢人会議までに、他の賢人達の協力を取り付けるのだ。王国にとって有益な決定を出すためにも、より多くの賛同者が必要だ。どっちのエルフを切り捨てて、より多くの利益を取るか。その選択を確かなものにするための最善手だ。
 エルフからどう思われようが、我等の態度は貫き通さねばならん。そうでなくては北の影響が強くなってしまい、王都にまでそれが及んでしまうやもしれん。・・・王女殿下に心労を掛けさせるような真似は私はしない」
「それは俺とて同じ事。コーデリア様には、平穏無事であって欲しいですから」

 前を行くエルフの従者は密談を聞いてはいるだろうが、それを口にする頃には十中八九死去する羽目となるであろう。要らぬ恨みを買うのなれば外交官の案内という重役は務まらないだろう。

「後で地図を広げてみよう。そうすれば自ずと答えは出て来る」
「了解です」
「・・・詳細な地図持ってるか?」
「・・・・・・借りて来ますね」
「急げよ」

 元来た道を急いで戻っていく慧卓を見遣りながら、アリッサはとっとと歩を進めていく。己に集中するエルフの民草の視線がどうにも威圧的に感じられ、臆する事無くとも、やけにむず痒く感じるのだ。己を律すると決めたからには先ずは心を落ち着けなければと、アリッサは従者の案内の背中を追って行く。



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 エルフの建物の一つで、へぇへぇとばかりの江戸っ子口調の平謝りが聞こえる。調子の良い声色を繕いながら一人の若い人間が地図を抱え、それに向かって衛兵が呆れ混じりに言葉を返す。口元は俄かにカーブを描いていており、若人はそれに気付いてか口元のそれとは裏腹に瞳は全く笑っていなかった。
 心温まるような一幕
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