七十二匹目
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瞳に笑みを浮かべて、少し感触が柔らかくなった気がした。
と、思ったがお父様に視線が向くと敵意が増した気がした。
「で、何用ですか隊長?」
「ああ、シラヌイも軍に伝手があると便利だとお義母様が言うのでな。練兵所に行く前に寄ったんだ」
「そうですね。シラヌイ様の立場なら私たちとは特に親しくしておいて損はないでしょう。クーコ様の騎士である貴方は五師団の中では我々か第一師団と共に戦うでしょうから」
「そういう事が無いに越したことはないけどね」
「ちょっと黙っててくれません?貴方実質的には筆頭殿の騎士なんですから」
お父様随分と邪件にされてるな。
まぁそれもそうか。
「練兵場に行くなら私が同行します。どうせ隊長では役に立たないでしょうし」
とそこで書類整理をしていた女性が驚いた声をあげる。
「え、書類どうするんです?」
「今日中の物は既に終わっています。それにここには誰も来ませんから」
「あ、言っちゃうんですね。わかりました。では行ってらっしゃいませ副隊長殿」
と、ここでも無視されるお父様。
どうした、全くカッコよくないぞお父様。
「あれ?俺は?ねぇ俺にはないの?」
「ほら行きますよシラヌイ様、クソガキ」
アトラ副長に促され、事務室を後にする。
ふと、この人どうやってこっから出るんだろう?と疑問がわく。
蜘蛛部分がつっかえてこの扉から出れそうにはない。
窓から出るのも同じ理由で無理そうだ、と思っていると、その答えは単純だった。
蜘蛛部分が縮んでいき、比較的高身長だが扉はくぐれるくらいの普通の女性の姿を取った。
脚は甲殻に包まれているが、蜘蛛のそれではなく、脚甲のようなデザインだ。
そこで思い至る。
この人はおそらく僕のように魔人や精霊種族なのだろう。
魔人とは魔物が時を経て知性と理性を手に入れ人と交流を図れるようになった存在だ特徴的な能力として魔物の姿、人の姿、中間の姿を持つとされる。
精霊種族は俗に妖精と呼ばれる者で知性は各種族でピンキリだが物理身体に寄らない生命である点は共通している。
僕…というかお婆様、つまりは玉藻御前の直系は両者の特徴を持っているらしい。
そもお婆様は狐の妖怪(魔人)であり、信仰を得て神に近づいた存在である。
精霊種族は神の下位存在とも言われているので、まぁお婆様も精霊種族に入れていいのだろう。
アトラ副長が階段を下りる度にカツンカツンと音が鳴る。
塔から出ると、さっきとは真逆のように蜘蛛の下半身を出していた。
「やはり、この姿は苦手ですか?」
と見ていた僕の視線に対して問われた。
「いえ、そんなことは無いです。変身能力を持っている人が
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