暁 〜小説投稿サイト〜
人徳?いいえモフ徳です。
七十二匹目
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「ん? じゃぁなんでここ来たの?」

カッコいい所と言ってたのでてっきり戦闘訓練でも見るのかと思ったのだが。

「お前に会わせたい奴がいる」

石の階段を登った先。

3階へ続くドアと扉がある。

扉を開けると中では数人が机に向かっていた。

一番奥に一人、その手前に3人。

お父様の言葉通り、事務仕事のための部屋のようだ。

「おや。貴方がここに顔を出すなんて珍しいですね隊長」

最も奥。

普通なら一番偉い人が座るであろう場所で仕事をしていた女性がそう言った。

彼女を一言で言うのであれば、そう。

異形、だろうか。

燃え盛る火炎のように長くウェーブのかかった赤髪。

ブラウスから延びる黒い甲殻に包まれた腕。

複数の瞳に下半身の後方に伸びる巨大な身体。

アラクネ。

ヒトの上半身と蜘蛛の下半身を持つ存在だ。

その姿は見る人によっては恐怖や生理的嫌悪感を感じるかもしれない。

だが、僕がはじめに感じたのは。

「うわ。カッコいい」

あ、しまった。

そう思ったときには口から言葉が出ていた。

「私を隊長から蹴落としておいて仕事を押し付け数十年単位で顔を見せない貴方が一体何の用で?」

おい。

思わずお父様を見上げる。

童顔を反らして下手な口笛を吹いている。

そういえば前に聞いたな。

お父様はお母様に一目惚れし、お母様に相応しい地位を得るためだけに王宮守護魔導隊隊長に上り詰めたと。

ということは彼女は…。

「まぁ貴方にようはありません」

彼女はそう言うと僕に視線を、その8つのステンドグラスのような目を向ける。

「貴方がシラヌイ・フォン・シュリッセル様ですね?」

「は、はい。そうです」

「はじめまして。私はアトラ・フォン・ナカ。先代の王宮直援魔導隊隊長です」

「二つ名はクリムゾンバリケード。屋内での戦闘では俺も敵わない凄腕だよ」

とお父様が注釈を入れる。

「そうですね。貴方は屋外戦闘で私を下して今の地位を手に入れましたものね」

「戦いは始まったときには終わってる物だよアトラ」

「左様ですかクソガキ」

彼女はそう言うと、蜘蛛の足を伸ばして机や手前で書類仕事をしている人を器用に超えて僕の目の前に来た。

目の前で脚を畳み、僕に視線を合わせようとする。

それでもなお高い体で、僕を見下ろす。

羽織っているマントのせいもあってかより大きく見える。

「…………」

ステンドグラスのようなきれいな目だ。

「私が怖くありませんか?」

「いえ。かっこいいし、綺麗だと思いますよ」

「あら、お上手ですね」

ステンドグラスのような
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ