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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その4
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とを、昨日のように甦ってくる。

「そして、一番の環境破壊は、BETAによる浸食だ。
中央アジアとアフガンでは、地形そのものが変わった。
7000メートルの高さを誇るヒンズークシ山脈もだいぶ削り取られた。
バーミヤンの石仏も、今や、灰となってしまった」




「東ドイツの環境汚染は俺が写真を撮って、雑誌にでも売り込めばよくなるきっかけにはなる。
おい、小僧。場所だけ教えてくれ。俺が後で調べてやるよ」
 前の世界で、環境問題から西ドイツの協力を引き入れた反体制派の事を思い起こした。
東ドイツの環境問題は、東ドイツ一国で済む問題ではなかった。
 環境基準の甘いことをいいことに、オランダをはじめとするEC諸国は自国内で処理に困る産業廃棄物の処分場を、西ドイツの金で建設した。
 その際には西ドイツから年間使用料として3300万マルクの金が支払われていたのである。
(1978年現在:1マルク=115円)
 東ドイツのごみ処分場は、西ドイツにとっては非常な軽減負担であった。
西ドイツとの国境沿いには大規模な埋め立て場やごみ処分場が建設され、東ドイツの建設会社がその事業を請け負った。 
 東ドイツには従業員数20人以下の私企業は認められていたが、そのほとんどは個人経営の食料品店か、テーラーであった。
建設会社などは、国営企業か、それに連なる団体である。
 つまり、西ドイツと東ドイツの間では、金で産業廃棄物の売買がなされていたと言う事である。


 その時、マサキの脳裏に黒い考えが浮かんだ。
写真家、映像を取って、売ればいい金になる。
さしずめ、ナショナルジオグラフィックやネイチャーといった知識層向けの有名雑誌。
あるいは、英国のザ・サンや、米国のニューヨーク・ポストなどのタブロイド紙でもいい。
全米一のケーブルテレビ、CNNやフランス第二放送にでも持ち込むのもよかろう。

「話はそれだけか。
俺も忙しい身分でな、暇を見つけて対応しよう」

だから、東ドイツの環境問題のことを、マサキが本当に憂えてくれての扱いなら……。
この出会いは、カレルやグレーテルにとっては、願ってない邂逅(かいこう)の機を作ってくれた。
彼の好意を、大いに感謝せねばなるまい。
 だが、マサキの真意がどこにあるかは、カレルには全くつかまれていなかった。
ベルリンに来て遊んではいるが、しかしその辺には、カレルも腹に一線の警戒をおいている。
 同様に。
グレーテルの様子にも、どこやらマサキの言葉を、そのままには受けとってない節がみえた。
 
 グレーテルが、静かな口調で、訊ねたのである。
「ところで、私の話も聞いていただけましょうか」
マサキは、カレル少年との会話は、そこで切って、不承不承に、連れの少女へも声をかけた。

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