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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その4
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た集団は、ドイツ北部から来ていた修学旅行中の技術学校の低学年であった。
マサキに年齢や旅行の理由を尋ねてきたが、マサキには非常に目障りに思えた。
鎧衣と白銀にその場を任せて、手を振って去ると、その場を後にした。

 喫煙所のベンチに一人腰かけ、紫煙を燻らせながら休んでいると、一組の少年少女が近寄ってきた。
この1970年代では、子供が喫煙所に出入りすることは珍しくはない。
だが、自分以外がいないところに何故と、マサキは訝しがった。
 成人の喫煙率の非常に高いソ連であれば、小学校高学年からの喫煙はざらであった。
成人の9割、婦人の7割が喫煙し、モスクワやレーニングラードの街中ですら、堂々と子供が外人に煙草をねだることがあったソ連と違って、東ドイツは喫煙にはうるさかった。
 紙巻煙草の値段も、東側諸国の中では比較的高く、軍や警察の教本でも喫煙に関しては、早くから医学的見地から注意がなれるほどであった。

 マサキは、彼等から目をそらしながら、新しいホープの箱を開けた。
気分を落ち着かせるために、タバコを立て続けに2本から3本吸う。
この一連の動作は、マサキの精神にとって、重要な一種の儀式と呼べるほどになっていた為である。

 黙って紫煙を燻らせていると、金髪の小利口そうな少年が声をかけてきた。
「失礼ですが、木原マサキさんですよね」
マサキは、ちょっと眉をひそめ、
「何の用だ。小僧」
「マルティン・カレルと申します」
そう名乗った少年は、しばらく辺りの気配を、確認した後、やがて小声をひそめて、
「貴方を見込んで、この国の環境汚染の惨状を話したいと思います」
と、彼の知りうる範囲の事を話し始めた。
 
 BETA戦争の結果、ソ連製の石油が不足して、質の悪い褐炭を用いている。
そのために、工業地帯の近隣住民に、公害が出ていること。
 東ドイツ政府は、環境汚染を隠すために、シュタージを用いている。
その様なことを、熱心に説き始めたのだ。

 マサキは、カレル少年の話を聞くうちに、過去への追憶に旅立っていた。
 ドイツはほかの先進職に先駆けて、環境問題への関心が高い国であった。
1898年にできた世界初の全裸団体、FKK。
彼らの思想には、すでに環境問題への関心の萌芽さえ、見えはじめていたほどであった。 
 FKKという集団はワイマール共和国、第三帝国、東ドイツのSED政権さえもその存続を許した団体であり、逆に西ドイツではナチス時代の悪癖と危険視された集団であった。
 ドイツの全裸主義に関して言えば、東ドイツ国民の5人に4人の割合で全裸で海水浴をしていたというから、その思想の浸透ぶりが分かるであろう。

 意外なことに東ドイツは、環境問題に1960年代から取り組んでいた。
ただし、社会主義諸国特有
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