暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第165話:その名は”愛”
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を覚え目を瞑ってしまう。痛々しいその光景に、しかし奏は否と口にした。

「目を背けるな。思い出せ、本当の事を」
「……本当に、私の記憶は、マムへの恐れだけだったの……?」

 自分の記憶にマリア自身が違和感を持ち始めたその時、彼女は改めて記憶の中のナスターシャ教授を見た。

 そして気付いた。嘗てのナスターシャ教授が幼い自分達に向けているのがどういう目だったのかを。

「そうだ……恐れと痛みから、記憶に蓋をしていた……。何時だってマムは、私を打った後は悲しそうな顔で……」

 それまで記憶にあったナスターシャ教授は、ただただ冷たく見てくる冷酷な存在でしかなかった。
 だがそれは間違いだった。本来のナスターシャ教授は、何時だってマリア達に辛く過酷な思いをさせてしまっていた事を悲しみ、悔いていたのだ。厳しく接しているのは、その後悔の裏返し。例え恐れられ恨まれようとも、幼い子供達を守ると言う決意の表れだったのだ。

「そうだ……私達にどれだけ過酷な実験や訓練を課したとしても、マムはただの1人も死なせなかった」

 大きな怪我を負った者達は何人も居た。だがナスターシャ教授は、そんな子供達に適切な治療を施して死ぬ事がないようにと最善を尽くしてきた。確かに姿を消した者達は居たが、彼ら彼女らは死んだ訳では無くナスターシャ教授により別の施設に移されただけだったのだ。実験や訓練についてこられなくなると言う意味では脱落したかもしれないが、何時かは人として再び再起できるようにとしてきたのである。

 それだけではない。マリア達がフィーネとして決起する事で存在が明るみになったレセプターチルドレンは全員保護されている。

 全ては、マリア達を生かす為だったのである。

「私達を生かす為に、何時も自分を殺して……」

 ふとマリアは、先日助けた農家のおばあさんの事を思い出していた。彼女は言う、美味しいトマトを作る為には、敢えて厳しい環境に置く事だと。ギリギリまで水を与えないと言うストレスを感じさせることで、トマト自身に甘味を蓄えさせるのだと言っていた。

「大いなる実りは、厳しさを耐えた先にこそ……優さばかりでは、今日まで生きてこられなかった。私達に生きる強さを授けてくれた、マムの厳しさ。その裏にあるのは……!」

 ナスターシャ教授は何時だってマリアに伝えてきていた。ただ、マリア自身がそれに気付いていなかっただけなのだ。
 逆に奏は、”それ”がそこにあるのが当たり前だった。だから気付かなかった。自分に力を与えてくれていたのが、その”存在”だと言う事に。

 胸に感じる温かさが、精神世界の奏とマリアにギアを纏わせる。人とギアを繋ぐ、その正体とは…………

「可視化された電気信号が示すここは、ギアと繋がる脳領域……誰かを思
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