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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その3
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人と一緒に歩いたぐらいで、嫉妬なさるなんて……
いくら天のゼオライマーのパイロットは、言っても……」
 アイリスディーナは、少しずつ、後ろへと、身をずらせた。
そして、女の身をまもるべく、その体を硬めた。
「ばかな。な、何を言うか」
マサキは、するどく直って。
「無敵のスーパーロボット、天のゼオライマーのパイロット。
そんなものを鼻にかけて、、誰が、これほどに手間をかけて女を口説くか。
お前の兄、この東ドイツにしろ、以後も変りなく付き合っているのをみても考えるがいい。
俺はただの男として、お前を口説いているのだよ」 
 
 アイリスディーナの胸は、苦しくなって、下へ崩れかけた。
マサキは、アイリスディーナの体を片手すくいに抱いたまま、ひたと自身の唇を近づける。
彼の焼けつくような唇は、烈しく彼女の甘美な紅唇(こうしん)をむさぼり吸った。
 抱擁もぐんと深くなって、激しくなった。
口付けを交わしながら、マサキは抜け目なく彼女の背中や腰に手を伸ばした。
灰色の勤務服の上着やタイトスカートを、ゆっくりと撫でさする。
 抱きすくめられたアイリスディーナは、陶然となっていく自分に困惑していた。
(「あ……、()けて行ってしまいそう……」)  
 まるで、夢の世界を揺蕩(たゆた)う様なキス。
それは、アイリスディーナが、かつて味わったことのない、情熱の口付けだった。
 アイリスディーナは、深く睫毛を閉じたまま、白い喉を伸ばし、マサキの手に寄りかかる。
興奮した息づかいを漏らしながら、まもなく濡れた瞳で、マサキの顔を丹念に見まわした。

 部屋の外の足音に感づいたマサキは、意識を一気に現実に戻した。
アイリスディーナの両腕を持ったまま、突き放すと、」
「議長が、戻ってきたようだ」

 議長が入って行くと、密かに二人を見くらべてから、席を離れたことをわびた。
「本当に申し訳ない」
 室内の二人は、身仕舞いにうろたえながら、慌てて立ち別れた気配である。
マサキの隣にいた、アイリスディーナを裏口から帰してしまうと、男はさっそく尋ねた。
「どうか、なされましたか」
白々しく、不敵の笑みを浮かべる男に、マサキは、
「いや、何でもない」と笑ってばかりいるのであった。
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