第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その3
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ウォール街のビジネスマンを頼るのは、無理からぬことであろう。
マサキは、議長があった人物を知らなかったが、ぴんと直感に来たものはあった。
相手は、自分を知っている風だった。
議長と会いに来た人物は、アメリカの石油財閥の3代目だった。
敵対する二人が、今まさに東ドイツの首脳がいるビルで運命的な出会いをしたのであった。
マサキは、部屋に入るなり、上座の議長から慇懃な挨拶を受けた。
「わざわざ、ご足労を掛けましたが……」
「挨拶はいい。要件を済ませよう」
マサキは席に着くと、日本の大手ゼネコンが東ベルリンの再開発事業に参加する計画を話した。
ベルリン中心のミッテ区に、25階建ての近代的な高層ビルを、建設しようというものである。
「図面は東ドイツの書いたものを使う予定だ。
建設省まで取りに行ってやるよ」
それは建前であった。
マサキは、東ベルリンの再開発をする復興管理局の事務所に行って、ちょっとひと暴れするつもりだったからである。
だが、マサキの甘い考えは、直ぐにうち砕かれた。
「図面の方は、午後までに用意してお届けしますので……
それまで、市中にあるペルガモン博物館にでもご覧になってお待ちください」
調子を合わせ、マサキは男を揶揄った。
「男一人で、そんなところに行ったところでつまらぬからのう。
誰か、名物であるペルガモンの大祭壇でも、案内してくれるのか」
議長は、マサキの言葉を待ちかねたように、手を鳴らした。
すると、その途端に後ろの大扉が開き、誰かが入ってきた。
灰色の婦人用冬季勤務服をまとう大柄な女性は、アイリスディーナだった。
思いもよらない人物の登場に、マサキは、驚愕した。
「あ、アイリスディーナ、どうしてここに!」
艶やかな長い金髪の下で、アイリスディーナは碧い目をひときわ輝かせていた。
(如何したら良いものか。まさかこんな形で再開するとは……)
マサキの胸の動悸が、弥増す。
二人は、黙ってお互いの顔を見つめていると、そこでドアがノックされ、別な秘書が入ってきた。
「失礼いたします。同志議長、お電話が入っております」
「ああ、分かった」
マサキは、複雑な気分で、男たちの会話を聞いていた。
もじもじするばかりのアイリスディーナと二人きりにされるのは、流石に気まずい。
「すみません博士、少し電話してまいりますので、お時間を頂きます。
その間、ご退屈でも、アイリスと話していて下さいませんか」
連絡を受けたことを汐時とみて、議長は、一旦、席を立った。
そして部屋を出ると、護衛を務める第40降下猟兵大隊の兵士たちに下がるよう命じた。
ゲスト役を務めているアイリスディーナには、マサキが何で鬱勃としているのか
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