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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
自由惑星同盟の最も長い3カ月
その名に誇りはあれど安らぎはなく
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さねば、総選挙の結果が我々の望むものにはならないでしょう。同盟全体が痛んでいます。バーラト首都圏は悲鳴を上げています。中間星域はなおさらに、そして交戦星域に至っては重症です。そしてそれらを繋ぐ星間流通星間流通を担う技術者と技能労働者は宇宙軍で集中的に消耗している。同盟社会の第一の病巣はここです」

 するとこれまで目を閉じて黙りこくっていたリヴォフがじろりとエオウィンに視線を向けた。

「エオウィン君。何を言いたい」

「与党が主導権を失った場合、困窮している層の世論が割れるということです。反戦市民連合と人民防衛同盟が耳目を引いてしまうでしょう」

 あの二つの政党は自由ですから、とエオウィンは吐き捨てた。

リヴォフは再び目を閉じ、頷いた。目を開くと、本土を失った国を背負う老人がついに立ち上がった。

「アスターテのためであれば‥‥うむ、決めた。法案を提出する。皆に協力していただきたい」

 

「リヴォフ老。与党に話を通してないと聞いていますが」

 リッツは目を細めた。この時期に緊急に法案を作って出すと?エオウィンの分析は正しい。そこで与党に先んじて状況をかき乱すだと?何を引き起こすのかわからないわけがないだろうに!

「4カ年計画‥‥いや8カ年でもいい!軍を拘束できる規模の支出による包括的な内政計画を法制化させる。当然アスターテとティアマトの復興もそこに組み込む!!」

 イロンシがギョッと目を見開いた。

「待て‥‥あぁいや待ってください、リヴォフ老!だがそれでは強硬派が反発します。バーラト首都圏の弁務官や軍部も敵に回りますよ!?」

 

 ロムスキーはゆったりとした口調で旧友をなだめようとする

「すまんがな。アレークシン。イロンシの言う通りだ。あと数か月で全国統一予備選の投票、そして年末には弁務官の3分の1の改選に下院と議長の総選挙だ。“今”その規模で船を揺らしても船から落とされるのは我々だぞ」

 エオウィンの古風な丸眼鏡がきらめいた。

「それについてですが、私に案があります。レダ級の試験運用は既に中盤。トリグラフ・プランの試験運用艦となるトリグラフも来年には完成するはずです。そこを抱きこむことで軍部を味方につけることはできるはずです」

「‥‥‥それで予算はどうなる?」

「予算は真水の量も重要ですがそれ以上に使い道です。会戦の損耗を大幅に削減できるのであれば、予算を民需に移しても昨日はすると判断します。軍需から民需に予算枠を移せば国債の利率も低い物に借り換えができます」

「軍需産業も経済ということですよ。【復興法に軍の再建プランを入れて悪い道理はない】はずです、違いますか?退役中将閣下?」

 エオウィンが微笑を浮かべるとリヴォフは呵呵と笑い始めた。
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