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神々の塔
第三十話 多くの神々その七

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「人を掴み殺して手足もぎ取るとか」
「そこまでやないですか」
「一人で出来るかよ」
 そうしたことがというのだ。
「流石にな」
「あの方でも」
「というか何でそんな話になったんや」
 シェリルはこのことが疑問だった。
「どの神話でもある話やが」
「あれちゃう?強さと猛々しさを表す」
 綾乃がシェリルに話した。
「それでちゃうかな」
「ああ、そういうことか」
「倭建命さんの」 
 即ち小碓命のというのだ。
「九州や関東を平定するに相応しい」
「それだけの力があるってか」
「知らしめた」 
 そうしたというのだ。
「そうしたもんちゃう?」
「そういうお話か」
「大碓命さんが美濃に行かれても」
 それでもというのだ。
「何処に行かれたか知らん人が多くて」
「殺されたとか勝手に思った人がおって」
「誰に殺されたかまでは知らんで」
 殺されたと思ってもというのだ。
「それで強い弟さんがやったんちゃうかって」
「そうなってか」
「出たお話ちゃうか?」 
 こう言うのだった。
「ひょっとして」
「そういうことか」
「実際あの方めっちゃ強いし」
 日本神話最大の英雄と言っていい、草薙剣を振るう勇敢さで以て昔から人気のある英雄そして神であるのだ。
「それでお兄さんをって」
「お父さんに注意しろって言われて勘違いして」
「掴み殺して」
 そうしてというのだ。
「手足をもぎ取って簀巻きにして」
「放り投げたってなったんやな」
「そうちゃう?」
「無茶苦茶な話やな」
「いや、私は確かにバッドなところあるけれどな」
 大碓命はまたラッパーの様な構えを取りつつ言った、口調もそうなっている。
「父上に注意されたらちゃんとだよ」
「なおされます?」
「ああ、それで弟もな」
 倭建命もというのだ。
「私を殺す様な奴じゃないさ」
「それもあそこまで無茶に」
「というかどんな殺人鬼だよ」
 古事記の倭建命はというのだ。
「ギリシアの神霊さん達じゃないんだからな」
「あの神話確かにそんな話多いな」
 リーは大碓命のその言葉に納得した顔で頷いた。
「言われてみれば」
「そうだろ、あっちは」
「ついカッとなって」
 そうしてとだ、リーはさらに言った。
「連続とか無差別のサイコ殺人や」
「神様も人もな」
「そんな話多いか」
「日本ではそうした話そうそうないだろ」
「残酷な話自体が少ないです」 
 歴史的にだ、二次大戦にしてもその実日本軍が行ったことで残虐行為はほぼなかったりする。
「ほんまに」
「それは神話の頃もでな」
「それで大碓命さんも」
「そんなことされてないぜ」 
 全くというのだ。
「私自身が言うからわかるな」
「はい、それは」
 リーも答えた。
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