愛に飢えた少女
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
馬岱に案内されて、城の中に戻る。
ちなみに移動時間の間も黎は俺の腕に抱き着いている。
「あ〜、黎。」
『どうしましたか?』
可愛く小首を傾げる姿を見て、このままでもいいかなと思ってしまう。
これ、狙ってやっていたら悪魔だぞ。
流される訳にもいかないので、しっかりと言葉にして言う。
「引っ付かれると歩きにくいし、周りの眼がな。」
主に?徳にだけど。
今も殺気とか憎悪などの負の感情が籠った視線が、俺に向けられている。
?徳の視線に気がついていないのか。
『周りの眼なんて気にしてなくていいのです。
優華に勝ったのですから、もう私達の恋路に阻む物は何もありません。
何なら、今すぐに愛の口づけを。』
眼を閉じて唇を近づけてくる。
馬岱は黎の行動を見て、どうなるかを想像しているのかニヤニヤ、と笑みを浮かべていた。
?徳に関しては言うまでもなく、双戟を手に取って構えている。
って、構えている!?
「おわぁ!!」
黎を抱きかかえながら、後ろに下がる。
俺の首を狙った一撃は空を切った。
あ、危なすぎるだろ。
あと少し反応が遅れていたら、首から血の噴水をお披露目する事になっていた。
咄嗟とはいえ、黎をお姫様抱っこしている訳だが。
何を勘違いしたのか俺の首に腕を回してくる。
『これこそ愛の口づけをするうえで、絶好の機会。』
「いやいや、この状況でまだそんな事を言えるのかよ!?
ねぇ、見えなかったの?
君のお姉さん、武器振り回して俺の首を狙ってきたんだよ。」
しかし、黎は俺の言葉を無視してキスに没頭する。
「話を聞け!!
お願いだから、聞いてください!」
『口づけを交わして、結婚してくれるのなら聞いてあげる。』
「えっ、黎ってこんなキャラなの?」
『きゃら?』
思わず素で思った事を答えてしまった。
その時、前方から鋭い殺気を感じ、前を見る。
双戟を構え、般若を連想させる顔つきの?徳がそこに君臨している。
嫌な汗が俺の背筋を伝う。
おそらく、?徳から見れば、イチャイチャラブラブしているように見えたのだろう。
さっきの勝負とは比較にならない速度で俺に接近してきた。
「ちょ!?」
首を狙った攻撃を後ろに下がって紙一重でかわす。
双戟の片方は柱に触れるが、豆腐のように綺麗に切断した。
俺の顔は今青ざめている、確実にだ。
何せ、自分の頬が引きつっているのが分かる。
「こ・ろ・す。」
「やってられるかぁぁぁ!!!」
脱皮の如く逃げる。
振り返らなくても分かる。
後ろから強烈な殺気が迫っている事を。
『これが愛の逃避行。』
腕の中に収まっている少女は、そんな呑気な事を竹簡に書いていた。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ