第百十一話 喫茶店での出会いその一
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第百十一話 喫茶店での出会い
咲は速水に紹介してもらった喫茶店に入った、その店は昭和の趣が感じられる店で二十一世紀と比べるとレトロな感じがあった。
そして落ち着いたものもありカウンターの椅子もだ。
何処か古い感じがする、咲はその開店する椅子に座ってだった。
メニューを見た、メニューというよりは品書きでありそこでコーヒーを視てエプロン姿の口髭の男に言った。
「あの。コーヒー一つ」
「わかりました」
男、マスターと思われる彼は笑顔で応えてだった。
すぐにコーヒーを出してきた、そのコーヒーを飲むとだった。
「美味しいです」
「嬉しいね、ただね」
「ただ?」
「うち別にだよ」
男は咲に笑って言った。
「特にこだわってはね」
「コーヒーにですか」
「いないんだよ」
「そうなんですか」
「普通にね」
「作ったんですか」
「お豆も専門的に選んでないし」
コーヒー豆もというのだ。
「これといってね」
「こだわっていないですか」
「何かうちのコーヒー人気だけれどね」
それでもというのだ。
「特にね」
「こだわりがないですか」
「美味しいものを飲んでもらおうって」
その考えでというのだ。
「作ってるけれどね」
「こだわっていないですか」
「よくコーヒーでそうしたお店あるね」
「特別にブレンドしたり」
「色々な種類の豆を揃えてね」
そうしてというのだ。
「やってるお店があるけれど」
「このお店はですか」
「終戦直後にひい祖父さんがはじめてから」
「二次大戦の」
「ああ、東京が一面焼け野原になって」
幾度に渡る空襲の結果である。
「それでな」
「この辺りもですか」
「もう本当に一面だったからな」
空襲で被害を受けたというのだ。
「その後に復員したひい祖父さんがな」
「マスターのですか」
「ああ、俺マスターか」
「違いますか?」
「そう言われると嬉しいな、おじさんってな」
彼は咲に笑って応えた。
「言われてるけどな」
「そうなんですか」
「マスターって言われるとな」
「嬉しいですか」
「じゃあそう呼んでくれるか」
「はい、それでマスター」
あらためてだ、咲はかれをこう呼んで言った。
「このお店終戦からですか」
「その直後からな」
「マスターのひお祖父さんが復員されて」
「戦場から戻ってきてな」
そうしてというのだ。
「家に帰ってすぐに買い出しに出てな」
「ああ、闇一に」
「ふらっと行って」
「ここに来られたんですか」
「そこでたまたま忙しかった屋外で蜜柑水売ってる人に手伝い頼まれて」
そしてというのだ。
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