第三十話 多くの神々その六
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「弟さんがや」
「その倭建命やな」
「平定した、多分大碓命は次男さんで」
「倭建命さんは三男さんやったか」
「長男さんが跡を継がれて」
そして天皇になられてというのだ。
「次男さんは養子に出して辺境の護りと統治でや」
「三男さんは各地の平定か」
「そうした役割分担になったんやろな」
「成程な」
「これは神話やが政の話で歴史でもある」
芥川は冷静な顔と声で話した。
「それで倭建命さんは滅茶苦茶強かったから」
「西に東にやな」
「朝廷の武力としてや」
「用いられたんやな」
「酷使と言うたらな」
「酷使されて」
「最後はああなったんや」
関東を平定した後で力尽きたというのだ、それが悲劇的な結末であるので人々の心を打っているのである。
「悲しいことにな」
「そういうことやな」
「ああ、まあその魂は祀られてるし」
「それはええか」
「こっちの世界でも神霊さんやしな」
「その魂を貴ぶことやな」
「僕等はな」
こう中里に言うのだった。
「この世界の色々なこと司ってくれてるし」
「それでやな」
「しっかりとな」
「そうすることやな」
「ああ、ほなや」
芥川は前から来た弥生時代の日本の武具に身を包んだ者達がシェリルの術で一掃されるのを見つつ中里に話した。
「これからな」
「その大碓命さん達のとこまで」
「行こうな」
「ああ、今からな」
中里も頷いた、そうしてだった。
神霊達が待つ階まで行くとだった、早速大碓命に言われた。
「全くよ、私が小碓命に殺されたとかな」
「デマですか」
「チョベリバのな」
綾乃にラッパーの様な仕草も入れて話した。
「そんなバッドテイストな話だぜ」
「そうですか」
「古事記の話はな」
「ほな日本書紀の話の方がですか」
「少なくともこっちの世界だとな」
それならというのだ。
「日本書紀の話の通りと思っていいぜ」
「隠れて帝に怒られて」
父親である方にというのだ。
「そうして」
「ああ、そっちもバッドな作り話でな」
大碓命はそれも否定した。
「実際の私はな」
「養子に出されたんですね」
「美濃の豪族にな」
そうされたというのだ。
「私は次男でな」
「長男の方が帝になられるので」
「それで征伐に行くのは嫌だと父上にお話したらな」
「美濃に養子に出されたんですね」
「辺境の守備と統治固めの為にな」
それでというのだ。
「行かされたんだよ」
「そやったんですね」
「ああ、小碓も確かに力は強いけれどな」
このことは事実だがというのだ。
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