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神々の塔
第三十話 多くの神々その三

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「古事記ではやねん」
「あの人殺されてるな」
「ひょっとして」
 綾乃は考えつつさらに話した。
「美濃に行った後で噂で」
「殺されたとかなったか」
「弟さんに」
「それでその話が定着してか」
「それでちゃうかもって」
 その様にというのだ。
「うち今考えたけど」
「まあ実の兄弟掴み殺して手足もぎ取って簀巻きにして放り擦れるってないわ」
 こう言い切ったのは芥川だった。
「何でもない理由で」
「そやね」
 綾乃は芥川のその言葉に頷いた。
「普通は」
「幾ら昔が今より荒い時代でもな」
「流石にないやろ」
「そやな」
「聞き間違えても」
 古事記ではそこからはじまっている、この話は。
「幾ら何でもそうして殺すとか」
「ないわ、というかな」
「というか?」
「僕この話最初に聞いて思ったことは」
 芥川は腕を組んで考える顔になって話した。
「倭建命ってどんな巨人かってや」
「人を掴み殺して手足もぎ取るとか」
「そんなん出来るってな」
「相当な体格差がないと出来んって」
「掴むのを両手でやなくて」
「片手で握るみたいに」
「そうして殺してな」 
 そしてというのだ。
「そこから手足を虫にするみたいにな」
「千切って」
「それで筵に包んでや」
「放り捨てたって」
「そう思ってな」
 それでというのだ。
「どんな巨人やってな」
「思ったんやね」
「そや、まあそうやなかったみたいやが」
 古事記の話でもだ。
「実際はそこまでな」
「大きくなくて」
「ただ怪力やったらしいな」 
 こう綾乃に話した。
「古事記の方でも」
「ただ力が強くて」
「それでや」
「両手で掴んでその力で殺して」
「そこからな」
 さらにというのだ。
「手足をもぎ取ってな」
「簀巻きにして投げ捨てたんやね」
「これは怪力でしたんや」
「別に巨人やなかったね」
「あの方もな」
「そやね、それで古事記の話は」
 綾乃はこちらの話で応えた、尚古事記も日本書紀も記紀と並び称されている通り日本の神話そして歴史の第一の史書である。
「うちとしては」
「ちゃうやろってか」
「思ってるねん」
「日本書紀の方がやな」
「あの方については正しいやろ」 
 大碓命についてはというのだ。
「やっぱり」
「実際は美濃の豪族の家に入った」
「婿入りの形で」 
 当時朝廷から見て辺境であり確かな守りが必要だった国にというのだ。
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