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第二十九話 家族その五

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「もう高校生だし」
「むしろ今までなかったのが不思議だな」
「ええ、それじゃあね」
「好きな人が出来た時もうちに連れて来てくれるか」
「ええ」
 颯姫は両親の言葉に無表情のまま答えた。
「その時は」
「楽しみにしているからな」
「その時が来ることもね」
「そして何時か颯姫もな」
「家族が出来るのね」
「私が家族を作って持つ」
 庚の言葉も踏まえてこの言葉を出した。
「そうなるのね」
「そうだ、お前がそうなる様に努力したらな」
「適うわ」
「努力ね。努力は目的に到達する為に行うこと」
 庚はまた言った。
「そうしたものね」
「それをしていくんだ」
「いいわね」
「家族を持つにも。それは恋人の絆から出来るなら」
 それならとだ、颯姫はさらに言った。
「まずは恋人ね。そして」
「若しかしたらよ」
 また庚が言ってきた。
「それはね」
「もう作っているかも知れない」
「ひょっとしたらね」
「わからなくなってきたわ」
 ここまで聞いてだ、颯姫は言葉で首を傾げさせて述べた。
「どうも」
「今はわからなくてもいいです」
 星史郎が言って来た、優しい声で。
「ですがそれでもです」
「後でわかるのね」
「そうです、考えていくといいです」
「このことについて」
「そしてご両親も大切にして下さいね」
 星史郎は颯姫にこうも言った。
「くれぐれも」
「そうね、そうしないといけないわね」
 無意識から、特に考えることなくだった。颯姫は星史郎に答えた。
「やっぱり」
「それだけで全く違いますから」
「お父さんとお母さんを大切にするだけで」
「それだけで幸せなことです」
 星史郎はこうも言った。
「まことに」
「幸せなのね」
「そのこともわかります」
「そうなのね、考えていくわ」
「そうされて下さい、あと僕は目が悪いので」
「サングラスをかけているのね」
「このことはご了承下さい」
 このことも言うのだった。
「是非」
「はい、無理はされないで下さい」
「目は大事ですから」
 颯姫の両親が答えた。
「何かと思いましたが」
「そうした事情がありましたか」
「そうです、失礼させて頂いています」
 星史郎は颯姫の両親にも優しい感じで答えた。
「私は」
「そうですか、では」
「お大事に」
「有り難うございます、まあこの目もです」
 颯姫に微笑んで話した。
「やがてはです」
「治りますか」
「いえ、解放します」
 ??の言葉への返答はこうしたものだった。
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