友人のジレンマ
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マユカの通う高校のチャイムが鳴り、放課後の合図を奏でる。
「アキヒサ、今日部活無いんだし、遊んで行かね?」
男子生徒はクラスメイトの1人に話しかける。
「ごめん、早く帰らないと…」
声をかけられたクラスメイト、アマギ アキヒサは暗いトーンで返す。鞄にしまうテストには、握ったであろう縒れた跡が付いている。
「そっか…誘って悪かったな。」
男子生徒は申し訳なさそうに言う。
「謝らないで。俺の家が変わっているだけだから。」
アキヒサは鞄を持ち、席を立つ。
「しっかし、お前んちの母ちゃんも凄いよな。95点以下はテストの点数と思ってくれないなんて。俺なんて赤点回避しただけでハイタッチだぜ。」
「オメェはもっと勉強しろ!」
「そういうお前だって、今回平均点下回ってたんだろ。」
アキヒサの机に集まった男子生徒達は返却されたテストの結果をネタに騒ぐようにじゃれ合う。
「それじゃあ、また明日。」
アキヒサは教室を出る。
「ありゃあ、帰ったら大変だろうな。」
「俺から見れば、85点なんて夢のまた夢なのによ。」
アキヒサの寂しい背中を生徒達は見ることしかできなかった。
「ただいま。」
アキヒサは自宅に着き、靴を脱いでリビングへ向かう。
「アキヒサ、テストの結果はどうだった?」
テーブルに飲み物を用意していたアキヒサの母は淡々と言う。
「ごめんなさい…」
アキヒサは母にテストを渡す。
「まさかこんな底辺が取るような点数が二教科もあるなんて、随分と遊ぶことに熱心だったのね。」
アキヒサの母は呆れた目でアキヒサを見る。
「それは…」
アキヒサは言葉に詰まる。
「あの人の意見を受け入れて個人の尊重をしようとしたことが間違いだったみたいね。エリートはエリートらしく、底辺を見下すための躾が必要だったみたいね。あの人も、お義父さんも、私もエリートなのに、生まれてきた子供がこんな出来損ないでは立つ瀬がないわ。」
アキヒサの母は、アキヒサに対して母親が見せるとは到底思えない態度で接する。
「それでね、私は考えたの。アキヒサの部屋にあるゴミを全部捨てればもっとエリート意識を持ってもらえるんじゃないかとね。」
アキヒサの母は、テーブルの下にしまってあった二箱の段ボール箱をアキヒサの前に出す。
「母さん、それって!」
アキヒサは何かに気がつく。
「アキヒサの部屋にあった勉強に必要ないゴミをまとめてあげたから、今日中に捨ててきなさい。捨てて帰ってくるまでご飯は無しよ。」
アキヒサの母は冷たく言う。
「俺が今まで大切にしてきたものをゴミなんて言わないで。」
アキヒサは泣きながら言う。
「そんなゴミを大切にしているからテストで失敗するのよ。」
アキヒ
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